米重 克洋氏(JX通信社 代表取締役)による記者会見概要

Twitterでシェア
Facebookでシェア
2019.06.19

2019年5月23日(木)15:00から、AIを利用したニュース速報サービスで注目を集める米重 克洋氏(JX通信社 代表取締役)による記者会見を行った。

米重克洋氏による記者会見

米重 皆様よろしくお願いいたします。JX通信社の米重と申します。今日は報道の機械化とビジネスとジャーナリズムの両立を目指す取り組みということで、ご紹介させていただきたいと思っております

まず私どもがどんな事業を行っているのか簡単な自己紹介をさせていただいた上で、報道産業が直面する3つの大きな課題を語ります。

そこで我々の定義なんですけれども、そこについてお話しさせて頂きます。

次に我々の具体的な取り組みとして、速報のサービスですとか、情勢調査の取り組みですとか、それぞれお話をさせていただければと思っております。

最後に我々が目指しております仮想通信社の構造についてご紹介をさせていただきます。
まずは簡単な自己紹介なんですけれども、我々JX通信社を一言でいいますと「報道ベンチャー」でございます。

報道分野に特化して取り組んでいるマーケティングベンチャーでございまして、社員の6割ぐらいがエンジニアを占めております。
通信社という名前がついてはいるんですけれども、基本的に記者というものは1人もおりませんので、そういった意味では非常に機械化できているかと。

そういった部分ではビジョンに忠実にやらせていただいております。我々が目指しているビジョンとしましてはビジネスとジャーナリズムの両立というものがあるんですけれども、 これを報道の機械化で実現していこうというのをミッションとしております。

報道産業というのはご存知のように非常にアナログな業界といいますか、労働収益のモデルであるというところがありますので、それをテクノロジーで効率化しまして、報道産業が産業として持続可能な状態を高める、要するに機械化できる部分は機械化して人間ができることは人間が集中するということを実現していこうということを目指している会社でございます。

私自身はこの会社を2008年に設立いたしまして、大学時代に設立した会社なんですけれども、特にジャーナリストとしてのバックグラウンドがあるわけではありません。
もともとニュースなどが非常に好きであったということがございまして、こういった会社を設立するに至っております。

現状そういった形の事業体でもありますので報道現場に一番近い立場ということで報道各社からも資本参加を受けまして、共同テレビジョン、テレビ朝日、フジテレビ、こういったところから非常に様々な事業にご助言やご協力をいただきながら、いかに報道現場の技術的な解決策を出していくかということを取り組んでいる会社でございます。

 

ファストアラート

主なサービスとしまして我々3つのものを提供させていただいております。特にこの左側のファストアラートですね。
これはSNSから緊急情報の収集をして解析をするというサービスなんですけれども、テレビ局の大半、東京ですとNHKさんと全ての企業にご導入いただいております。

こういった形のいわゆる取材の即効性を高めながら効率化していくサービスで、一般消費者向けにはダイジェストというニュース速報に特化したアプリ、後ほどお話しいたしますけれどもデータジャーナリズムの取り組みの一環として情勢調査ですとか選挙の情勢を電話調査で分析していく。

この部分を自動で機械化しながら報道に必要なクオリティを確保していく、そういった取り組みをさせて頂いております。

機械化と手動化ということがキーワードになっておりますこの背景としましては、先ほど申し上げましたように機械ができることは機械に任せて、人間は人間でしかできないことに集中をしよう、そういったことが報道現場の選択肢として取れるように我々が解決策を作っていこうと、そういうことをやっております。

これをもう少し言い換えますと、機械で通信社としての機能をどこまで構築できるかということでチャレンジをしております。

報道産業のコストは頭割りするというのが元々の通信社の存在意義と言いますか、歴史的な成り立ちでもありますので、そういったモデルを今改めてテクノロジーを使ってどこまで再現できるかというのが我々JX通信社の取り組みであるという風にご理解いただければと思っております。

ではなぜそのそこまで機械化にこだわるのかという理由の部分で報道産業の課題についてお話しさせていただこうと思っております。

まずは前提として確認しなければならないのは報道機関はやっぱりビジネスであるということだと思うんです。

ビジネスである以上は収益がコストを上回る必要があるということを前提として確認しなければならない。
これをもう少し突っ込んで言うと、要はビジネスとして報道が成り立つには収益が出てコストを下げるということが今の課題として必要である。解決する必要があるということが言えると思っております。
そういった前提を元に我々は報道産業に3つ大きな課題があると考えております。

それは1つ目はこの何から何まで人間がやるという構造ということ、労働収益型であるということがきっかけで、やはりコストの問題、あるいは働き方の問題、こういうことが出てくる。

2つ目はデジタルシフト、これが遅れていると 要するに情報の流通部分を新しいプレイヤーにどんどん奪われていて、収益もそこに比例してなくなっていっていると。

3つ目にそういうコストと収益の部分もなかなか厳しいのに競争相手がたくさん増えて、相対化されて本当はもっと必要な部分に投資しなければいけないのになかなか難しいというのが課題。

この3つの大きな課題が我々報道産業にあると考えております ひとつずつお話しさせて頂きますと、まずは何から何まで人間がやるという構造と働き方の課題と書いておりますけれども、やはり新聞社を中心としたジャーナリストの組織に関して、これはやはり労働収益型であると、一言で言えばそれが特徴であると言えます。

こういった組織で、収益が減ってきたからコストを減らさないといけないねという時に、その方法としてはどうやっても人間を減らすという、1人当たりの報酬を下げる、あるいはその両方をやらないといけないということになってしまっている。

往々にして組織というのは人間を減らしたからといって仕事が減ってはくれないんですよ。そうすると1人当たりの仕事量ですとか時間ですとか、そういったものが増えていって長時間労働とか、場合によっては過労死ということも生じてしまうということを構造問題として放置してしまうと、やはり産業として優秀な人材を惹きつける、数ある業界から報道という業界を選んでもらうという、そういった力が損なわれる結果として非常に悪循環に陥っていることが状況がまず1つあるんじゃないかと思っております。

2つ目にこのデジタルシフトが遅れているという情報流通の収益と課題と書かせていただいておりますけれども、ここで注目しないといけないのがスマートフォンの存在なんです。

このスマートフォンというのはここに書いてあるように驚異的な時間吸引力を持っております。今までは無駄だった時間が接触時間に変換される。
ゲームでも音楽でも動画でも消費者が欲しいと思うものが何でもあるという状況であるということ。

10年前とか15年前とかどうだったかということを思い返していただくと分かると思うんですけれども、手には四つ折りにした写真とか雑誌とか新聞とか持たれている方が結構いらっしゃったと思うんです。

私も電車通学をしていたりしましたので、そういった向かいの人が紙媒体を読んでいたのがいつのまにか携帯電話に代わって、その後スマートフォンに変わっていたというのをよく覚えております。

大部分がメディア接触時間になっているというだけではないんです。実際に飲食店の行列の写真なんですけれども、ここにもやっぱりスマートフォンを持っているという新しいメディア接触時間が生じているわけです。

こういうお店に並ぶ30秒とか1分という時間はメディアの接触時間にはありえなかったと思うんですよ。ある意味アプローチができない時間であり、そういう30秒とか1分とかわずかな隙間時間もメディアの接触時間に変換してしまうというのがスマートフォンの非常に驚異的な時間吸引力を示しているのではないかと思っております。

これは統計でも裏付けるデータというのがありまして、これは博報堂のメディア環境研究所と言うメディアに関係する研究所が毎年出されている研究データなんですけれども ご覧のような形で一番右側の赤い部分 ここがスマートフォンの滞在時間の変化を示しております。

上が2006年で下が2018年なんですけれども当然時期を追うごとに増えていると。
また1人当たりの消費者の平均メディア接触時間なので、横のバーの長さ自体は新聞とかテレビとか他のメディア接触時間も含めた時間の合計を示しているのですけれども、徐々にメディア接触時間が増えているんです。

スマートフォンというのはテレビとか新聞から滞在時間を奪うだけではなく、新たに創出もしている、新たに作り出していることが明らかになっていると思います。

こういったことを踏まえて考えるとやはりプラットホームと言われるものの存在が非常に恐ろしく感じられると言うか、驚異的なものなんだなということが分かるかと思います。

要はTwitterだとかFacebookだとかyahoo! とかそういう存在でもいいと思うんですけれども、プラットフォームというのはこういう滞在時間を最も優先的に吸収できる立場にいますと。

ユーザーがそこで滞在時間を過ごせば過ごすほどそこにデータがたまります。ユーザーが色々動き回ってデータを貯めるわけですね。

そうするとそのデータをもとにユーザーが本当に見たいものはこれなんじゃないか、こういう記事なんじゃないかということをどんどんレコメンドと言いますけれども、おすすめをしていくということでどんどん最適化されていくわけです。

そうするともっとより長い時間をTwitterで過ごそう、長い時間Facebookで過ごそう、もっと長い時間ヤフーニュースを見ようといった形で報道が流通に取り組みきれないうちにユーザーがプラットフォームに集中してしまうと。こういう現象が起きているというのが今この時点での現状となっております。

こういった形で流通構造がやっぱり奪われていって、個別宅配とかそういったところの優位性もなくなってきているという部分で当然収益が減っていくわけですけれども。

そういう状況の中で相対化されて質を問われているという課題が生じているというのがある意味、報道産業の非常に厳しい状況につながっているのかなと思います。

要は新聞、テレビ、雑誌、ラジオだけがメディアではない時代になっているということでニュース以外の領域とも当然競争していかないといけない。

そういう中で今後5Gとかも始まりますので、非常に破壊的なインパクトがある。おそらくテレビも含めて影響してくるんではないかと言われております。

そういう状況の中で、この何から何まで人間がやりますというコスト構造の重さとデジタルシフトが遅れることによって収益が減るという状況。

さらに競争相手がいっぱい増えているにもかかわらず、そこに投資する余力がないために やせ我慢をして競争力が低下している状況というのが繋がって負のスパイラルになっているのではないかというのが我々の報道産業に対する一番大きな課題意識です。

こういったことを変えるためには、やはり産業構造の転換が必要なのではないかと考えています。負のスパイラルを断ち切れるのは我々はテクノロジーだけなのではないかと考えております。

例えばコスト構造の部分で言えば機械化、自動化を進めるということで軽いコスト構造に作り変えるということ。

2つ目に滞在時間を最大化するためにしっかり流通構造を自分たちで獲得していく。スマートフォン上でのニュースの存在感を高めていく。収益の最大化。

最終的にはそこの収益とコストのバランスが取れてしっかり競争力に投資できる状況を作る。

こういった正のスパイラルを回していくということが、やはりテクノロジーでしかできないことなのではないかということで我々は報道の機械化という言葉を使ってそれを目指しているという状況です。

そういった意識の中で我々が実際に取り組んでいることとして先ほどご紹介したサービスがあるんですけれども、まずファストアラート。

これはAIをベースにした緊急情報サービスです。具体的にお話をさせていただければと思います。

ファストアラートはご覧のような形で、この事件事故災害に関係するような写真とか動画とかテキストだけの情報も含めてるんですけれども、こういったものを解析していつどこで何が起きたかを解析することを基本にしております。

SNSに投稿されたテキストとか画像、動画、こういったものを解析しまして、どこで何が起きたのかと。これで言えば広島県広島市広島城付近に危険な動物が出たと。こういった内容の解析結果を出すといったことがファストアラートの基本的な仕組みになっております。

こういったものを活用するメリットとしては、まずは3つあるかと思うんです。
1つはこう言ったように当局から得られない情報も収集可能であると。要は警察や消防が出さない情報でも目撃者がそこにいれば情報が出るということ。

2つ目は写真や動画で現場の情報確認をすることも可能であるということ。

3つ目にやはり取材の初動が早くなるということ。この辺がやはり一番インパクトが大きい部分だと思うんですけれども、非常に重要な部分がこの3つとなります。

何か事が起きてから今まで記者の方が覚知するまでに警察とか消防に電話をかけたり当局が発表したりするということを通じて各自が発表したりされていたと思うんです。

ただファストアラートの場合は現場の目撃者とか当事者からの前情報の段階で情報が入ります。要はSNSにアップしますのですぐ情報が入るわけです。

従ってこのタイムラグ。ことが起きてから報道機関がそれを覚知する。このタイムラグを大幅に短縮できるところが非常に重要なポイントです。

我々のファストアラートの最初のお客様は報道機関でしたので、そういった意味では顧客である報道機関に特オチをさせないということを求められた。そういう意味では即効性が非常に重要なポイントであると。

かなり急速に普及しまして。2016年の9月にこのファストアラートは有償データ版ということでリリースしましたけれども、その半年ぐらい後の2017年の4月頃には NHKと在局企業全てに普及するという状況になりました。

例えば昨年のケースではあるんですけれども。ご覧のような形で東海道新幹線の車内で発生した殺傷事件 去年の6月にありましたけれども。

こういった事件に関しても車内の乗客からの投稿によって9時45分ぐらいに発生した事件が9時50分頃にはこのファストアラートで配信をされるということで、これは実際に業界紙にも紹介されていましたけれども、共同通信など各社がファストアラートを元に取材をして速報して、喧喧囂囂としてはそれよりかなり後だったということで非常に早く配信できたケースでありました。

速報性以外にも重要な部分として、例えば去年の2月陸上自衛隊のヘリコプターが佐賀県の神埼市で墜落をしたと言うケースがありましたけれども。

これももちろん8分後ということで短い時間で配信できたんですが、それ以上に重要なのが情報の内容ということなんですね。

防衛省は当初、着陸して炎上したとか不時着したとかいう言葉を使って説明をした。それに従った報道が最初に出たんですけれども、直後からファストアラートの中でヘリコプターが真っ逆さまに落ちていくのを見たですとか、あるいはそれはもう明らかに墜落しているよね。というような写真や映像がたくさん出てきておりました。

そういった状況の背景があって午後6時ぐらいには防衛大臣も墜落したという言葉を使うようになって、非常に状況を正しく把握するという意味でもSNSの有効性というところが見えた部分だったのかなと思っております。

それ以外にもSNSの情報は公共機関の発表以上に速いというようなケースというのが最近ちょこちょこ出てきているんです。

ファストアラートで実際に検知したものの1つなんですが 去年の台風21号の時に大阪の堺市で撮影された映像なんです。電柱が倒れて電線が切れて 周りは停電をしている状況なんですけれども、この時大体のべ12万戸、関西電力のエリア内で停電をしてまして非常に大規模でした。

ただ実は関西電力の停電情報システムに障害が発生してしまいまして。しかも台風の被害のピークのちょっと前の時間に障害が発生してしまったので、どこがどのように停電しているのか全くわからない状況になったんです。

その時にSNSで大体この辺で停電していますよ。これくらいの規模感あるんじゃないですか。と言うことが網羅的に把握できましたので関西全体のリアルタイムの停電情報はファストアラートを通じて各社取材されて、実際この辺は結構停電しているよねと有用な報道ができたという状況もございました。

それ以外にも取材陣や当局が現場に入りにくいケースというのもあるんです。これは7月の西日本豪雨岡山県内のケースなんですけれども。

悪天候でかなり冠水しているもヘリがなかなか飛ばせないというような状況があった。それに対して現地の当局や報道がファストアラートを活用して取材とか避難の手伝いだとかそういう事に動いたというケースがありました。

実際こういった動画とかが岡山の倉敷市中心に投稿されていまして。まさに孤立状態なので助けてほしい。と有用なものが出ておりました。

こういった災害以外にもUCCと言われる一般のSNS投稿を元にした報道というのは中東地域のテロとか空爆とかそういったような現場でも状況が分かるようにということで積極的に使われ始めたという経緯がありますけれども、こういった部分でやはり警察や消防あるいは公共の政府、そういったところ以外にも新しい情報源としてSNSあるいはファストアラートのようなツールが非常に有用なものになっているというのが現状でございます。

こういったこともありますのでこういったサービスというのは 2011年の3.11から非常に多数開発、模索されてきたという動きはあったんですけれども。
全国的に普及しまして、この分野では過半数もしくは全局 導入が日本全国という状況になっております。

ここまでファストアラートについてお話しさせていただいたんですけれども 、同じ技術を使って我々がニュースメディアの収益化の取り組みを模索しているニュースダイジェストと言うアプリについても簡単にご紹介させていただきます。

ニュースダイジェストというのは何をやっているのかと言うとニュース速報の速報性があるかどうか、報道価値があるかどうかというのをAIで解析して、報道価値のある速報だと判断したものを自動で携帯電話やスマートフォンにプッシュ通知を送るというアプリです。

そういう意味では報道価値を機械が判断するというところがニュースダイジェストの特徴の一つになっています。
そういったこともありまして、速報のプッシュ通知の速さには非常にこだわっておりまして、かなり多くのニュースが他のニュースアプリよりも早く届くということで評価を頂いてございます。

AIがニュースの報道価値を判断し速報を配信する。というのがポイントではあるんですけれども、それ以外にもファストアラートを通じて収集した情報を外部の緊急情報の専門企業がございますのでそちらと連携しまして、消防や当局に確認を取って 確認が取れたものをその地域に速報する。こういったような取り組みを行っております。

我々の中ではこういった速報をキャッチするのであれば、ニュースであればファストアラートが一番早いと。その後はニュースダイジェストが一番早いと。こういった形で組み合わせができるということで作っております。

こういったニュースダイジェストの運営の意図としましてはスマートフォン自体のメディアの収益モデルを探求して行こうと。

要はコストを減らそうということもそうなんですが、サービスとしての新しい価値を作って、どうやって儲けるかというモデルを作って行こうと模索しております。

ご覧いただいている式が我々が考えるメディアのサービスのある意味収益の式なんですが、ご覧のように滞在時間をどうやって価値に変換できるかという効率の部分。

この掛け合わせが収益になるのではと考えております。例えば広告モデルを例にとってご説明しますとご覧のように両サイドに消費者と広告主がいまして。

消費者がプラットフォームサービスを使うわけですよね。その時に消費者は当然時間を支出するわけです。

例えば1日15分 Yahooニュースを見る人がいるとしたら15分をYahooニュースというサービスに支出をしているという状況になる。Yahooニュースはそれをどうするかと言うと 広告1インプレッション 1ページビューという形で広告価値に変換をしてそれを広告主に言うと。

そういう意味では滞在時間を仕入れて、 それをいかに高い価値に変換するかというのがメディアのある意味ビジネスモデルであるといってもいいのかと思っています。

この滞在時間をどうやって増やしていくか、あるいは習慣的に長い時間見てもらうかということがどうしてもメディアの収益化ということにおいては必要になってしまうということころがあります。

これをやはりコンテンツの力でまずはやろうと。あるいは価値変換効率ということで言えば、いかにそのユーザーにマッチした広告を届けるか、あるいは広告モデルであれば広告の在庫である表示回数をいかに高くするか。こういったことが必要になります。そういった部分にデータの蓄積を活用していこうと。

コンテンツの部分だけあるいはデータの部分だけではなく、その掛け合わせでサービスとして全体を設定する。これがプラットフォームの考え方であり、またメディアサービスの基本的な収益モデルの考え方なのではないかと思っております。

やはりこのコンテンツだけの理論というのが報道の中でされがちな部分なんですけれども、そこだけではダメで、やはりサービスとしてどのように価値を作っていくかというのが非常に大事なんではないかというのが我々が絶えず考えていることです。

実際にニュース以外の部分に目を向けていくと非常にそういったケースというのが顕著に増えてきております。

例えば料理のレシピサービスであるクックパッドさん、こちらは月額280円のプレミアムサービスに200万人以上が加入している状況がありますけれども、レシピがコンテンツです。

ところがそこではなくてその並び替えとか保存、要はみんなが作ったレシピはおいしいから自分もそのレシピを作られた順に見たいと言ったそういった並び替えとかサービスとしての価値にお金を払っている人が200万人ぐらいいると。

同じように料理でも外食の部門ですけれども食べログ。こちらも月額300円のプレミアムサービスに200万人以上加入している状況があります。

コンテンツとして見ればおそらくお店の情報がコンテンツであると言う、ただユーザーがお金を払っているのはそこではなく、ランキングをスマートフォンで並び替えて美味しい店順に並び替えたりとかそういったところにお金を払っているわけです。

よりメディアに近いと言うとニコニコ動画ですね。ニコニコ動画も最近は調子が振るわないという部分がありますけれども、それでも月額540円のプレミアムサービスに200万人が加入をしているという非常に大きな成功例だと思います。

こういったところもやはり動画ソフトということよりも低画質モードですとか生中継の時に割り込まれたりだとかを回避するためにお金を払う。 そういったサービス的な価値にお金を払っているというところです。

情勢調査について

ここまでは速報関係の事をお話ししてきたんですけれども、それ以外にも情勢調査ということで若干毛色が違うんですが、我々の取り組み、報道企画の自動情勢調査と書いておりますけれども。こちらについてもご紹介させていただきます。

我々は報道の機械化という文脈でストレイトニュースにかなり取り組んでいますけれども それと同時に選挙の部分を非常に重視しております。

我々は情勢調査の電話調査を自動化したものなんですけれども、ご覧のような形で例えば最近だと徳島新聞と徳島市選の合同調査を行ったりですとか、後はこちらは衆院沖縄3区の選挙、沖縄テレビと我々の合同調査を行ったりだとか、あるいはその前の物で言うと琉球新報さん、沖縄テレビさん含めて県民調査を行ったりしてきております。

こういった報道各社と連携しているものだけではなくて、自社で企画をしている調査というのもあります。

新聞社別の安倍政権の支持率ですが、産経新聞を読んでいる人は7割8割安倍政権を支持しているけれども東京新聞の読者は8割以上が安倍政権を不支持である。こういうことがわかりやすく電話調査でも出ると。

これは非常に反響がありました。なかなかこういう調査は例えば産経新聞が、産経新聞ですけどと言って電話をかけてできる調査ではないというところがありますので。

我々が自主企画でこういったものを調べてみるといったことをしております。 それ以外にもこの間の東京都議選の例ですけれども、なかなか報道各社も選挙情勢に報道コストをかけられなくなってきておりますので、例えば都議選のような地方選は注目度が高くても調査回数が限られてくるんです。

ただ我々の場合はここに関しては自社でずっと調査を続けまして 投票日が7月だったわけですけれども 1月から毎月調査を続けて、ずっと都民ファーストが優勢であると言うことを私のヤフーニュースの記事でもご紹介をし続けてまいりました。結果としては非常に得票率に近い結果というものを実際に予測することができた。

その後に小池知事が国政に転身するかしないか、みたいな形で希望の党を立ち上げて2017年の衆院選に臨むと、こういったときも都内で継続的に我々は調査をしておりまして、おそらく都政に関係する調査の回数としては一番多い回数を我々がやっているのではないかと思いますけれども。

国政に進出するかしないかと言われ始めてから投票日間際、綺麗に小池知事の支持と不支持の状況が入れ替わってしまう。
そういったような状況も我々がそういった調査で発見して、紹介をしてきたといったケースがございます。

 

そもそもなぜこういう情勢調査に取り組み始めたのかということの部分で申し上げますと一言で言うとこれなんです。
お金がかかるのに儲からないと、これが選挙報道の機関から見た課題だというふうに思っております.

現状情勢調査をどういう風にやられているかと言いますと、やはり電話調査とそして出口調査。この2つの組み合わせによって行われています。ご承知のようにやはり報道産業が厳しい状況がありますので、それぞれ非常に予算減、そして縮小という波になっているわけであります。

これは実際に私が調べてみたものなんですけれども、1996年と2017年で報道機関が実際に行なった情勢調査の収益 これを選挙ごとに調べてみました。

衆院選参院選、知事選市長選、中核市の市長選、こういった形で序盤と終盤で報道各社の情勢調査が各地あったかどうかということをだいたい調べてみたところなんですけれども、16年の場合は衆院選と参院選と共に序盤終盤両方ともやるというところがありました。知事政令市長選でもかなり前半後半2回やりますというところが多かった。

中核市の市長選でもしっかり人口50万人に満たないですとかそういったところでもやりますというケースで実際に情勢調査が報道されていたとわかりました。

ただこれが2017年になりますと衆院選。今年ありましたけれども。序盤は全選挙区やります。けれども中終盤の調査になってくると例えば1/3くらいの選挙区に絞って調査をしますという形で縮小されていくと言うことが実際にありました。例えばそれに乗って東京18区菅直人元総理の選挙区ですけれども、こういったところが早々に自民党の方がおそらく勝つんではないかと有用な予測のもとに調査対象から外れて、結果としてそれが逆に出るというようなケースもあったりしました。非常にこの部分というのは減らし方もなかなか難しい部分になっていると。

知事選、政令市長選、地方選に関わる部分はもっと厳しくて、知事選クラスでも情勢報道が最後までないみたいなケースが最近はちょこちょこ見られています。政令市長選でも同じ中核市の市長選に関しては今は事実上やらないのが基本。地方紙を中心になっているように見られます。

さらに私が個人的に危惧をしていることなんですが、情勢調査がないのに情勢報道をしているケースがある。

要するに各陣営が与野党への取材を通じて情勢を探った結果、誰々が優勢ですとか書いて報道しているケースが新聞社を含めて出ている状況があります。

これはやっていることとしてはほぼ占いに近いと言うか、自分で調べて数字を持っているわけではないので非常にある意味無責任なやり方になってしまっていると思います。

特にその政界関係者にきけば、大体情勢調査の数字を教えてくれるんじゃないのと言うと確かに教えてくれるんだとは思うんですけれども、それが嘘をはらんでいないということは誰も検証できないわけです。

そういった意味で言うとこれは非常に危ない。ある意味情報戦のダシに使われるということがある。そういった意味では非常に良くない傾向だと思っています。

そういったことで言うとやはりそのデータとファクト。この2つに基づく選挙報道というのがもはや成立しない状況になってしまっているのではないかというのが私が非常に危惧していることであります。

こういった情勢調査の縮減で何が起きるかと言うと1つ目の部分。まだ明確に証明できたものではないんですけれども、我々が掴んでいる感覚としてやはり情勢調査による情勢報道。これが行われてから有権者の態度決定がハイスピードで進むという傾向があるように我々は見ています。これは仮説のひとつなんですけれども。

逆に言うと、態度決定が進まずに関心が低いまま投票に至ってしまうと投票率が低いまま再選される。そういったようなことが起こりがちな地方政治の状況が起きていると見ています。

さらにやはり有権者にとっての情報としてはこの効果的な投票行動。その選択ができないと例えば参院東京選挙区は6人区ですけれども 6番手7番手に自分が投票したい政党の候補者がいるということが分かればその人に対して投票しますという行動を有権者は取ることができるというわけです。

ところがそういった情勢報道がないと何の情報もありませんので選択のしようがない。
3つ目に情勢をめぐるデマ、フェイクニュースの拡散。

この辺は先ほど申し上げましたようにある意味プロパガンダによって、例えば誤った情勢が流布される。そういったケースが非常に散見されるようになってきています。

こういった部分の有権者を惑わすとか、あるいは場合によっては取材者も振り回されるようなデマの拡散、こういったところが情勢調査の縮減の悪影響として起きてしまっているのではないかというのが我々の課題感としてあります。

まとめるとこの有権者が知る権利を阻害している。民主主義が機能不全になっていると言っても過言ではないと思っています。

これを解決するためにはやはりコストはもちろん下げなければならないけれども同時に調査としての品質、ここを報道に耐えうるレベルにするような何か新しい手法が必要であると我々としては問題意識を持っています。

現場の電話調査がどうなのかと言うとここ10年ぐらいは機械で架電をする方式オートコールというものが情勢調査では使われておりまして、コストとしては非常に安いというものがあります。

ただ回答率も結構低いんです。1桁パーセントというのはざらにありますし高齢層に極めて偏るというものがあります。後ほどご紹介させていただきます。

人間が架電する調査に比べてみると報道機関がいわゆる世論調査として行っているもの 人間が電話をしていますけれども当然回答率は高い。ただコストも高いです。人間がかけますので。

1サンプルを取るのに数千円とかかかってきてしまう。ここを実際にデータで比較したものが先日毎日新聞の政治プレミアというサイトで紹介されていたので利用させていただいたんですけれども。

人間よる調査がこの左側の円グラフ、年代の構成を見て頂きたいんですけれども。ご覧のような形で40代50代60代70代 70代が若干多いですが、割とこの辺がバランスが取れている。

この調査は逆にこちらを見て頂きたいんですけれども、機械による調査オートコールアンドリースによる調査によると60代と70代以上がほぼ3/4を占めていると。

要するに60代以上で7、8割というのが回答率の低い調査のある意味、結果なんですね。こういった形で年代が偏ってしまうと例えば年代によって態度が大きく変わってくるようなアジェンダがその地方選挙で問われている場合、最近だとわかりやすいのが大阪でいうと都構想ですね。

そういったようなものの場合は非常にこういったものが調査の、ある意味結果を歪める部分というのが出てきてしまいます。

我々としては 独自方式を開発しまして原理は既存のRDD一般の電話番号を自動乱数生成してかけるというところまでは全く同じなんですけれども自動音声で発音してプッシュボタンで回答する音声補正法術だとか電話番号の生成プロセスといった部分を改善しまして 機械並みのコストで人間並みの回答率を作れるようにしよう。つまり4、50%は出るようにしよう ということを実現しました。

それが実際の結果が先ほど書き換えたものなんですけれども、先ほど毎日新聞の政治プレミアで紹介されていた人間による北海道知事選挙の結果です。

同じ時期に我々も電話調査を行っていましたけれども、ご覧のような感じで4、5、6、70代が 2割ちょっとずつということでかなりバランスとしては人間に近い。もしくは70代以上とかの割合で考えるとこちらの方がバランスはいいかもしれないというくらい年代構成を実現しております。

この辺はやはり先ほどの機械のものと比べると7割以上が近いです60代になってしまうということと比べていただけると非常にわかりやすいかと思います。こういった違いが同じ機械でも技術的に突き詰めるとちゃんと作れるというところで機械でも人に近い年代構成を実現しまして、この年代の偏りをなくしてどの地域でも40代50代60代70代が概ね2割前後確保できるようにした結果として投票場に足を運ぶ有権者に機械でやるよりは普通に近い構成が作れるというところが技術的な特徴になっております。

これを実際に選挙で検証したものが結果を並べたものがこちらなんですけれども、これは2017年の大きい地方選挙を並べてみたものでして。

ご覧のような形で大体1ポイント2ポイント 大体僅差である程度正しく予測ができている かつ順位に関しても正確に出せているということがご理解いただけるかなと思います。

特に都議選のケースの場合はこれは報道各社が基本的に6月の半ばぐらいまで自民党が第一党というような報道を続けていました。そういった意味では都民ファーストがかなり差をつけて第一党になるという所をかなり正確に予測できたという意味では、このある意味手法の有効性というところを一つ立証できたと考えております。

それ以外にも最近のケースですと日本テレビ自民党総裁選の党員票の情勢調査のお手伝いをさせていただきまして、ご覧のような形で安倍さん51% 石破さん41%という結果が出ました。

この数字を出した時は共同とか読売が先に調査をしておりましたので石破さんそんなに強いのという反応が非常に多かったのですけれども、この数字をもとに党員票の獲得数を計算するとご覧のような数字になるんですね。

安倍さんが220票以上、石破さんが180票くらい。結果としては安倍さんが224票、石破さん184票ということでほぼピタリと予測することができたというのがあります。

こういった形で非常にデータとしては正確に選挙の予測ができるというものを作ってきたので今後はデータの蓄積を増やしまして、より高精度な選挙予測の仕組みを確立したいと あと現状どうしても電話調査であると固定電話を中心とした電話架電を行っておりますので、これに代わる手法の研究開発ということも進めていきたいと思っております。

最終的にはやはりデータとファクト、この2つに基づく選挙報道をしっかり新しいコスト構造の中で持続できるようにしようということを目指しております。

JX通信社が目指すもの

ここまで一通り我々の主な事業の内容についてご紹介させていただきましたが我々が何を目指すのかというのを最後にちょっとまとめさせていただきたいと思います。

我々の構想として仮想通信社というものがございます。我々はバーチャルな通信社です。これは何を念頭に置いているかと言いますと 2つの変化を意識しております。

1つはまずは最初から申し上げておりますようにテクノロジーがある今は人間と機械の分担ができるようになってきているということがまず1つあります。

もう1つは個人が新たな情報の発信源になっていると。今までだったら報道機関じゃないと取れなかったような情報をたまたま現場に居合わせた目撃者が撮ってSNSに投稿する こういった形で新しい情報の発信源というものが生まれてきている。こういった状況に合った新しい報道機関のモデルとして仮想通信社というものを我々は目指しています。

今までの報道機関で言えばまさにこの図のように人間が情報を集めてきて、記事を書いて全員に同じニュースを流すというスタイルでしたけれども、我々の仮想通信社というのは70億人からスマートフォンやSNSを通じて電子的に情報を集めて自動でそれを解析してコンテンツを作っていく。

そして最終的にマルチデバイス、あらゆるデバイスで1人1人パーソナルに情報を発信していこうと。そこで機械と人間の住み分け分業というのができれば報道産業の持続可能性が大きく高まるのではないのかというふうに考えております。

そのプロセスの中でファストアラートやニュースダイジェスト、あるいは新しい研究開発ということを大切に行っているという状況がございます。

歴史的に見ますとロイター通信なんかも元々伝書鳩だとか飛脚的な情報ツールによって支えられていたこと。電信テレグラフという新しい技術によって大きく改良していくということを実現してきた。そういう意味では報道産業のブレイクスルーをこの通信社のテクノロジーの組み合わせで作っていたと思うんです。

今はスマートフォンとかソーシャルメディアとかAIとかそういった新しいものがありますので、そこに合った新しい通信社像。これを仮想通信社として我々は引き続き追求をしていきたいと思っております。

以上になります ありがとうございました。

 

質疑応答

それでは質疑応答の時間とさせていただきます 質問のある方は手を上げてください

サイゾー ファストアラートの人の関わり方なんですが、不特定多数の人がSNSで発信した情報が報道機関に流れるまでの間に、まったく人間のチェックと言うか、目を通じたチェックというのはないシステムなんでしょうか。

米重 ファストアラートに関しましては、画面上に情報が入ってくるところまでは完全に自動になっています。

ただその後に間違えた情報とかが例えば間違えた地名がつくことがあるんです。例えば広島県広島市の情報とかが、広島県だけど違うところの地名がついてしまったりだとか、そういった情報が入ってくるケースもありますので そういったものに関してはデータを管理するということでチームがウォッチするという仕組みがございます。

それによって常になるべくここに正確な情報が出るような状況にしておくということをやっております。

サイゾー 記者はいらっしゃらないと言っておりましたけれど今言っていたような確認ができる専任のスタッフがいるという体制ですか。

米重 そうですね。その部分はやはりデータを新しい形で作っていって、機械学習という技術があるんですけれども。学習をさせていて新しいものが出てきてもちゃんと分析できるようにすると、そういった学習のもとになるデータといいますか。そういうデータをつくっていくためにはやはり人間の力というのも欠かせないというのも技術的な状況ですね。

サイゾー 今の話からするとファストアラートの改善点、技術的には改善中だという所はありますか。

米重 そうですね。我々としては今、事件、事故、災害とかそういった情報を集めているんですけれども別に事件、事故、災害だけがニュースではないというところがある。

例えば花鳥風月とか、どっちかと言うとポジティブな話題。そういったようなものも含めて人がそれを知りたいと思うようなもの。
報道価値という軸でもいいですし、それ以外の軸でもいいんですけれども、広く分析をしてそのメディアだとか、あとはお客様が欲しい情報を届けていく。

そういった部分では緊急情報以外にも活用範囲がかなり広げられると思っておりますし、技術的な課題として我々が取り組んでいるものになります。

サイゾー ありがとうございます。

記者 海外で同じような取り組みをされているベンチャーがあるかということと、もし前例がない場合は今後の海外展開のお考えというところをお伺いできればと思います。

米重 海外ではファストアラートに非常に先行して2000年代の後半からデータマイナーという会社が非常に知名度としては高い部分がございます。英語圏ですね。アメリカヨーロッパを中心に中東ぐらいは。

データマイナーというところは非常に時価総額も1800億円ぐらい、いわゆるユニコーンと言われているベンチャーですけれども、アメリカのCIA系のベンチャーキャピタルも出資していると言うことでこれはかなり知名度があります。

逆に言うとこういったSNSのウォッチというものをテクノロジーで支えていく仕組みを作ったのは彼らだと思っております。逆に彼らがあまりできていない部分というのは日本でもまさにそうなんですけれども非英語圏への取り込みなんです。

やはりこういったものを作るには言語処理の技術が欠かせないのでそういった部分である意味日本語と言うという独特な言語が参入障壁になっていたというところもあるのかと思います。

日本国内でデータマイナーを使っているのは 私の知る限りではNHKさんぐらいしかないのでそういった意味では非常に参入障壁というのが言語によって作られている。これは日本に限らず各国にある状況だと思うんです。

そういった意味ではアジア圏に関しては我々非常に関心を持って 技術的にも研究をしながら今後日本以外でもこういったものを提供していければというように考えております。

週刊現代 2つあるんですけれども1つは単純な質問なんですけれども、クックパッドを例に挙げられていましたけれども、コンテンツ自体に課金するというよりもコンテンツを見る利便性とかで課金する方が今の主流と言うか そういった状況があるんでしょうか。

米重 はいそうですね。それもまさにそういった趣旨でお話しさせていただいたところなんですけれども、やはりそのコンテンツ自体にお金が入っていく仕組みというのは昔から試されて来ていた。

ただ最終的にはコンテンツをどういう風に見せるかという一番はサービスとしての価値に課金をする方が成功事例としてはニュースに限らず全世界的に非常に多いと認識しております。

週刊現代 もう1つは基本的に情報のソースとしては 一般人のSNSの投稿ということになるわけですよね。

米重 そうですねファストアラートとしては一般人のSNSの投稿が情報のソースの全てです。

週刊現代 情報としてこういうことがありましたということは伝えられると思うんですけれども、ニュース記事を書くということは可能なんでしょうか。

米重 そうですね。いつどこで何が起きたという情報を複数の投稿をもとに生成をしていくというか、分析をしていくということは技術的には可能です。

ただそれは一般に出す時には確認が不可欠だと思いますので、その部分は逆に今の状況では報道機関のお客様がやると。ある意味人間と機械の分解点になっていると言えるかなと思います。 報道責任を誰が負うかということですね。

週刊現代 JXさんから一般の情報を得るというよりは 報道機関を通してという形になる。

米重 そうですね、ほとんどはそうです。一部先ほどお話ししたようにニュースダイジェストの中でファストアラート緊急情報で確認を取れたものは流すという場合もあるんですが、それに関しましては緊急情報の専門企業と連携して消防に確認を取ったりだとか、人的な確認をして人間が責任を負うという体制をしっかり作って、出す。

こういった流れになっておりまして、そういうところは最終的にやはり人間をかませるところは本質的には同じという状況になっております。

経済ジャーナリスト松崎 ファクトチェックに関してなんですけれども、基本的にどの程度までのファクトチェックができるのか。
先ほど文字情報と写真を比較して違っていればチェックすると話されていましたが例えば写真のGPS情報を取り出してきたり実際にその場所がどこであるか確認するとか、あるいは発信者のアドレスをチェックしたり、発信者がどの程度の精度で発信しているか確認するといったことはやられているんでしょうか。

米重 そうですね。解析の中ではほとんどの使える情報はすべて使っているという状況です。例えばフェイクとかが流れてきた時に大体過去の災害での写真だとか動画を使いますとかそういうケースが非常に多いので。そういったものに関しては99%事前に排除できるというような状況に今なっております。

経済ジャーナリスト松崎 複数人が故意に写真を捏造するとか作った場合にチェックする体制というのはどういった体制なんでしょうか。

米重 先ほど申し上げたような形で、ファストアラートにはデータをメンテナンスするチームがありますけれども、そういった形でまず見てみますというところはまず1つですね。
もう1つはファストアラート自体に出ている情報というのはこれは一般に広く公開されている情報ではなく、報道機関とかそういう情報を責任を持って扱う体制ができているところにご提供しているという状況がありますので最終的な確認としてはお客様の方でやるという前提である程度確からしいものをすべて出すというスタンスでやっているという部分があります。

経済ジャーナリスト松崎 一応基本的に情報としては新聞社などにとっても社会部情報が中心だと思うんですけれども、それ以外の情報に関してはこれからどんな取り組みを考えておられるのか、海外の情報なんかは同じやり方で1つできるんじゃないかと思うんですけれども、それ以外の例えば経済情報であるとか政治情報であるとかそういったものに関してはこれからどんな取り組みをされて行かれるんですかね。

米重 先ほど申し上げた花鳥風月とか他にジャンルをちょっと広げて様々な情報を集めていくということを今考えているんですけれども、そういった文脈の中で全体としては公開情報として世に出ている物の中から良いサイトと言うか深い情報を見つけていくか、ということが我々に共通するテーマとしてあるかと思っております。

そこの部分で例えば政治であれば政治家の発信、これがTwitterで行われるケースが非常に多くなっていますのでそういったものを幅広く監視をするとか、あるいは投稿のパターンが変わったらそれを記者にフィードバック、指摘するとかそういった取材支援的な形の使い方、あるいは経済でも企業や企業に関わる社員がどういう風なSNS投稿しているか そういったものを分析してその次の動きを予測するとかですね。

そういった範囲というのは考えられるかと思っております。 それに関しては今後ちょっと研究開発しながら、世に出せるものを出していこうというふうに思っております。

経済ジャーナリスト松崎 最後にひとつ AIによってニュースの優先順位を決めて行くということなんですが、具体的にはどういったものを基準にAIが基準にして普段やられているんですか、それはアクセス数なんですか?

米重 ニュースダイジェストの場合は申し上げたように報道価値をAIが判断するというのが基本的な部分になっているんですけれども、そういった定量的なデータというよりは ニュースのヘッドラインだとかあるいは最近報道された話題なこととかでもそういった解析をしまして、社会的に影響が大きいんじゃないかと思われる第一報というか、そういったものを言語処理的なアプローチで検知をするという仕組みになっています。

ということで最終的にはこれは報道価値が高いんじゃないかといったスコアみたいなものは出てくるんですけれども、それは別にたくさんアクセス数があるからということではなく、例えば記事とかヘッドラインとかからこれは多分報道価値が高い、過去のデータからもそういう風に見られるというものを一番最初に見つける。

一番最初に見つけるということはアクセス数があまりないという状況でそういうものを発見しなければならないということになりますので、そういった基準を我々の中にも作ってそれを機械で再現をしてということをやっている。そういうイメージです。

週刊金曜日 以前から画期的な取り組みをされていると感じておりまして、著作権の話をお伺いしたいんですけれどもtwitterの画像などで画像付きで見させていただくことがあるんですけれども、そういったものの投稿者の著作権についてはどういうふうにお考えになっているんでしょうか。

米重 twitterでは利用者の規約というものがありまして、これに完全に準拠する形で運用をしております。
ファストアラート上の画面に出るとか、そういったものの形の場合にこれに関しては全て規約の中の枠内で、例えば埋め込みという方法がありますけれども twitterが定めた引用の方法ですね。それにしたがって埋め込むというようなことをやっております。

週刊金曜日 民放さんなんかではTwitterでこういった画像を使いたいのでその所お願いしますということをやって軽く炎上したりするようなケースもあるかと思うんですが、そこはテレビの場合は埋め込みじゃないから使う場合に一応許可を取る。という仕組みになっていると思うんですが。

米重 おっしゃる通りです。

週刊金曜日 規約上そういうのにされているというのは理解できるんですが、クレームみたいなことは今までになかった?

米重 ニュースダイジェストとかでファストアラート発の情報が流れてくる時なんかにですね、例えばできればこの投稿に関してはこういった情報は載せないで欲しい。というようなご連絡をいただくことは稀にあります。

そういう時にはこういう規約にのっとってこういうふうにやらせていただいていますけれども速やかに削除する。という形で対応を取ってきております。

ビジネスジャーナル 選挙報道について一言お尋ねしたいんですが個人的には出口調査とか投票前の情勢報道というのはものすごい違和感を感じておりまして。

出口調査はあったことはないですけれども、もし共産党に投票したとしても自民党に入れたと言ってやろうとは思っておりますけれども、機会がないので実現できていないのですが、一秒たりとも票が開いていない状況で放送開始とともに選挙情勢が明らかになってしまうと言うことに対するものすごい違和感なんですよね。選挙に行く必要性が全くないよね。

普通にある特定の1000人なら1000人の有権者を無作為に選出して、全員にどちらに投票しますかと聞けば選挙という行為がいらなくなるんじゃないかという感じでものすごく違和感を感じております。

昔は体育館に集めてが双眼鏡で100票単位でまとまった投票の塊を数えている。そういう仕組みだったんですけれども、それでどうしていけないのか、そこで速さを要求する必要性が全く感じられないですよね。

票が一票も開いていないのに当選がどちらかに傾いている。この違和感というのを有権者というか視聴者の方はあまり感じてらっしゃらないのでしょうか。それはどう思われますか。

米重 おっしゃっている出口調査の意義というのは2つあると思いまして1つはまさに報道各社がある意味いち早く当確を出すという速報の競争のためにやっている部分というのが間違いなくあると思います。 それに多分違和感を持たれている方というのは一定数いらっしゃると思うんですね。

私個人としてはそういう所に関しては確かに違和感はあるだろうなと思いながら私は選挙の票読みが好きというのがありまして、楽しんで見てしまうというのが正直あります。
もう1つ出口調査の意義として私はこれがとても重要だと思うんですけれども、民意の中身を確認できる手段というのは出口調査、情勢調査だけなんです。

というのは選挙の場合、例えば小選挙区で1人だけ当選しますという、そういった場合に候補者は2人います、という風になったら基本的にAさんには何票が入りましたBさんには何票が入りました。という以外のデータは選管からは得られないわけです。

ところがこれを出口調査でやったら例えばじゃあ有権者はどういう点を重視して投票に行ったのかとか、あるいは何党を支持しているけれどもこの人に投票した、みたいなそういう投票行動の内訳をしっかり見ることができるという、これはやっぱり出口調査でないとなかなか実現ができないことなんです。

その結果として例えば沖縄のように毎回その自民党候補が負けるような選挙というのがあるんですけれども、その中身じゃあ基地問題だけが争点ではなかったのかというふうに自民党側はいうわけなんですけれども。

実際に有権者に聞いてみたらそれは圧倒的に基地問題を重視して投票しましたという人が5.6割いますみたいな、こういう状況になっているとかある意味そういう民意をチェックすることができるという意味ではやはり調査としては絶対に必要で、それを速報競争に使うかどうかみたいなところに関しては基本なくてもいいのかなという、そういう考えを私自身は持っております。

記者(氏名不鮮明) アラートについてなんですが差し支えなければで結構なんですがこちらをお願いするといくらぐらいかかるんでしょうか

米重 こちらはYouTubeなんかで中継されているかと思うので後ほどオフラインでお話しします。

記者(氏名不鮮明 ファストアラートを実際にテレビ局の方が誰が導入されて、生の声と言いますか働き方の改革があったとか行動として何か変わってきたという変化が見られているところをお伺いできればと思います。

米重 ファストアラートに関してはもともと開発のきっかけになったのは共同通信の業務フローの中なんですね。手動で行うとやはり大変労力がかかるだけでなくてtwitterとかで事故とか検索していただいたらわかりますけれども、事故に関係する投稿なんて100件に1件もないわけです。ものすごくノイズ、関係のない情報が非常に多い。

これを人間がずっとやっていたら基本的には疲弊してしまうという状況がありますので そういったところを機械化できないかというのを我々が実現したというのがファストアラートというところがあります。

そういった意味ではそこにある意味監視人員の数ですとか、そういったところは確実に各社減っているということで、そこに関しては明らかにやり方が変わっているというフィードバックは相当頂いております。

逆に我々が課題として困っているところというのは速報競争の話じゃないんですけれども やはり結局みんな使うようになってますと、じゃあどれだけファストアラートを熱心に見ているかといった状態に各社がなってしまうところがありまして、そういったところはやはり局の体力とかにもよりますけれども避ける体制にも差があるので、我々がそういったところで競争を煽るというのは本意ではない。

そういったところを今後どういう風に解決、あるいはもっと良くしていけるかと言うたところに関しては課題かなと思っているところです。

サイゾー 情勢調査で機械による調査が年齢的な偏りが出てしまうと言っておりましたが 報知器を開発したらそこが大きく改善されたというので、その情報システムというのが説明だけだとどこまでのことをしたのか、どのような変化が出たのかなと言うことがわかりかねたんですけれども、同じ機械なのにどうしてそんなに違いが出たのかと言うことを教えて頂きたいんですけれども。

米重 我々も最初に機械での電話調査というのを作って試し始めた時には回答率は同じように低くて高齢者にかなり偏っていたんです。そこから改善を始めていきまして、要はまずKPIを回答率に置いたということが一つ、次に一番大きいのはやはり音声なのかなと思っております。

電話というのは固定電話、携帯電話、両方ありますけれども、やはり通信環境というのが回線といったところによって、例えばちょっとくぐもって声が聞こえたりだとか、いろんな聞こえ方があるんです。

ある程度どういう所にかけても聞き取れるという声、あとは人間がかかってきてもガチャっと切りたくならないような声、あるいは文章を含めてどういう文章なんだろうとか、あるいは間の作り方とか、そういったところに関してはまだ逆にあまり創意工夫というのが少なかった部分だと思っておりまして その辺のところはかなり改善しました。
それによってかなり上がったということがわかります。

後は電話番号の生成の部分ですね。RDDの場合はやはりランダムに電話番号を作るということで無作為抽出をしているシステムなのでそこに関してはかなり無作為であるというところを守りながらやらなければならないということがあるんですけれども、今までの電話調査の場合それを電話帳ベースでそれこそ電話帳の中に載っている番号から見つけるという方式でやっているケースもあります。

こういうところだとやはりなかなか電話帳自体のデータが古くなっている場合もありまして。または個人情報保護法の影響もありますので、結果として高齢者ばかりにかかるというケースも出てきておりますので、そういったところを完全にフレッシュな番号を我々が自分で生成すると、そういった形に切り替えたということによって今のような結果が出たというそういった改善の流れがありました。

サイゾー ちなみに電話の対象には携帯電話も入っているんですか

米重 全国の調査の場合は携帯電話も対象にできます。逆に地域を絞るのは携帯電話ではできません。番号がそういう風になっていないので。なので例えばどこどこの知事選だとか、どこどこの選挙区の衆院選とか、そういうものの場合は固定だけと言うことになっております。

サイゾー 固定電話でも若い層を増やすということは結果的に出来たということでしょうか

米重 そういうことですね

記者 情勢調査についてもう少し聞きたいんですけれども、先ほど占いと表現されていましたが、そういった報道機関とJXさんのつながりを教えて頂きたいんですけれども

米重 先ほど申し上げた部分としては要は情勢調査をせずに情勢報道をしているケースがあるというところが最近やはりここ3年ぐらいなんですけれども非常に目につくようになってきております。

これをやってしまうと情勢調査というある意味数字の結果根拠に基づかないまま、ある意味聞いた話だけで数字に関わるようなものを書いてしまうというところが非常にまずいことではないかという 文脈の中でも指摘をさせていただきました。

こういったところに対する解決策としましてはやはり情勢調査に対するコストを下げてデータをちゃんと根拠があるような形で使っていただくというのが我々が一つできること。

と同時にやはりその取材者としても誰が優勢であるとかどういう割合で誰が支持されているのかというような情報は自分たちで確固とした情報源が得られない限り、つまりちゃんと自社で調査するですとかそういったことが得られない限りは書かないというようなことが、ある意味その節度と言うか、そういったことが必要なんではないかと思っています。

記者 JXさんから見て報道機関に問題があるんでしょうか

米重 報道機関というよりは情勢調査をせずに情勢報道をしているというのは占いと言われてもしょうがないかと思います

記者 何割ぐらいの感覚であったのか教えてください

米重 1割ぐらいですかね まだ8割9割とかではさすがにないですね。
普通は情勢調査をして書くというのは基本だと思います。

サイゾー ニュースダイジェストのアプリのことでさっきも質問があったんですけれども 報道価値の判断で例えば人命とか財産に関わるものの価値の高さはわかるんですけれども大衆の関心が高いものとして価値が高いというところが結構そこは難しいのかなというのと、過去の関心が高いワードが含まれている見出しとかそういう単純な判断の仕方でやられているのかな というのがちょっと分からず。

もう少し深い AIならではの関心の高さの拾い方というのがあるのかどうかっていうのを知りたいんですが。

米重 過去に例えば速報として報道された、例えばテレビとかでテロップになると言うと分かりやすいかと思うんですけれども。

そういった形で速報として報道されたものというのは我々は絶えずウォッチをしておりますそういったものを解析をして、過去大体人間が分からない部分でも速報としてこういうものが価値があるというか、たくさんの人がある意味驚くというか、そういった形で出るよねということを付帯的な反響の情報と言うか、そういったものも含めて収集をしてそれを解析をしているというイメージです。

要するに報道各社が今までどのような速報を出してきたかということのデータをもとにやっているという風に申し上げればいいかと思うんですけれども。

サイゾー 今ニュースダイジェストは広告を貼っている形で

米重 そうですね ニュースメディアの場合、広告か課金かという大きく二つの収益モデルに大別されると思うんですけれども。我々基本的にはハイブリッドが一番落としどころなんではないかなというふうに見ておりまして。
現状は広告モデルのほうをまずはやっているというような状況です。

サイゾー 広告の出し方に御社のAIといった技術みたいなものを使っているということはありえるんですか。

米重 ニュースダイジェストの自社の広告システムというのは我々が当然自社で内製しておりますので、そういったものの中で例えばこういうユーザーにはこういうものを出すという部分でそういう要素のある技術というものは使っております。

ただそこを売りにしているというよりはサービスとして早く情報が届くとかそちらの方が我々としては特徴として押し出している部分ではあります。

ただ今後ももちろん広告モデルをしっかり追求していくと言う部分は避けて通れない部分なので、そこに技術をどういう風に使うかということは絶えず研究をやって行こうと思っております。

Twitterでシェア
Facebookでシェア
最新情報
記者会見情報
記者会見報告
イベント
日本ジャーナリスト協会賞