第8回自由報道協会賞授賞式およびシンポジウム概要

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2019.05.16

第8回自由報道協会賞授賞式およびシンポジウム概要

2019年4月23日(火)13時00分〜15時00分
参議院議員会館 B1F B107

第8回自由報道協会賞

受賞者
本間龍(作家)
田中龍作(フリージャーナリスト)

選考委員
元木昌彦(日本インターネット報道協会代表理事)

シンポジウムテーマ「日本の政治報道の自由度を向上させるためには」

パネリスト
山口一臣(協会理事)
田中龍作(フリージャーナリスト)
本間龍(作家)
安倍宏行(ジャーナリスト)
杉尾秀哉(参議院議員)
福島瑞穂(参議院議員)
藤田幸久(参議院議員)

進行
大貫康雄(代表理事)

第8回自由報道協会賞受賞式

山口 第8回自由報道協会賞授賞式およびシンポジウムを開催いたします。司会は私、協会の運営委員を務めます山口一臣です。どうぞよろしくお願いいたします。

開会に先立ちまして、主催者であります公益社団法人自由報道協会を代表しまして代表理事の大貫より開会の挨拶を一言申し上げたいと思います。それではよろしくお願いいたします。

大貫 大貫です。この自由報道協会自体はですね、2011年の1月に発足しました。きっかけと言いますと、陸山会事件で新聞、テレビはこぞって検察側の一方的な報道しかしなかった。

じゃあ、名指しされている小沢(一郎)さんはどういう意見をお持ちなのか。とにかく全然マスコミが取り上げようとしない、一方的に誹謗されている人たちの話を聞こうというところがきっかけでした。

それから2カ月も経たないうちに東日本大震災と、福島での東京電力福島第一原発の大事故が起きました。そのあとに、「じゃあ、被災地、現地はどうなっているんだろう」と会員がようやく現地に入りました。そこでとんでもないことが起きているとわかって。

その現場の事実を一つ一つ出していきますとね、「何だ、嘘を言ってるじゃないか」とか、「とんでもない」とか、「まあ、ひどいレッテル貼りだ」とか言って、テレビ番組や新聞から外されていくと。それが相次いだ時期でした。

それから自由報道協会で紆余曲折が起きながらも今日まで来たんですけど。
そういうこともあって、元の会員も去り、寄附金で成り立っていますけど、その収入がかなり減ったと言われました。

で、実は今かなり低空飛行ながらも安定軌道に入っているのは、苫米地(英人)さんという、脳認知学者というんでしょうか。オウム真理教事件でかなり有名になった方がおりました。
この方が「編集と経営の分離をして、経営の責任を担当させていただく」ということで。わざわざテレビで、30分の番組で宣言しました。

実はそれ以来、本当にこの人はわれわれのこと、活動に全く関与していません。経営は本当にご本人ができる限りのことをしていただいて。これは本当に滅多にないことです。これは一言、皆様に申し上げておきたいと思います。寄附金で成り立っています。
本当にそういう方々がこれからお一人、お二人でも増えて、さらに増えていかないかなと思っております。

そういうこともありまして、今回は実は二人の方に。選考委員長からあとでありますが、賞をお贈りすることになりました。
ということで、早速始めたいと思います。

山口 自由報道協会賞は自由報道協会設立1周年を記念して、取材・評論活動を通じて、ジャーナリズムの信用と権威を高めた作品を表彰するために生まれたものです。

最初の頃はいろいろ各賞、写真賞とかスクープ賞とかですね、アクティビスト賞とか。いろいろあったんですけど。だんだん財政的に厳しくなってきたので(苦笑)。ここ数年は自由報道協会賞、大賞ということで授与させていただいております。
それでは選考委員の元木昌彦様より受賞作の発表と選考経過の報告をお願いしたいと思います。

元木 元木でございます。よろしくお願いいたします。
今日は朝ちょっと人間ドックに行きましてね。簡単に済むと思ったら、ギリギリまでかかったもんですから。特別悪いものが出るかどうかというのは、わかんないんですけど。ちょっと遅れて来ました。申し訳ありません。

私は自由報道協会とは何の関係もない立場なんですけども。(日本)インターネット報道協会という、まあ、皆さんお聞きになったことがあるかもわかんないですけども。

そこを私が『オーマイニュース』というところにいるときに立ち上げて。ドワンゴさんだとか、ジェイ・キャストだとか。そういう人たちと立ち上げたのが、多分、2008年ぐらいですかね。自由報道協会はそれより少し遅れていたと思いますけれども。

この間、講談社を辞めて、『スマートニュース』っていうんですか。私はあんまりよくわかんないんですけども。そこに行った人間がやっぱり「インターネットメディアの向上を目指したい」ということで会を立ち上げて。賑々しくやったという報道がありましたけども。

私はこういうネットメディアの質を高めるというのは確かに必要だと思いますけども。まあ、われわれもそうですけどもね、協会を立ち上げて、ネットメディアの質がよくなるということは絶対ありません。私の経験から言ってもそうだと思います。

やっぱり個々の人たち、そういう人たちがこういう協会の人たちも含めていろいろな切磋琢磨というんですかね。話し合いをしたり、それから批判をし合ったりですね。そうして質を高める。

ネットメディアの正しい報道はとは一体何なのかというですね。そういったことを考えていく中から生まれてくるもんだと思います。それでは、私の力足らずで申し訳ないんですけども。その私が何か大変な映えある賞の選考委員を務めさせていただきました。大変に光栄だと思っております。

今回はですね、第8回自由報道協会賞ということで。お二人の方、私はこのお二人の方とは直接の面識はないんですけども、よく存じておりまして。大変素晴らしい活動をこれまでにもしてらっしゃる。
このお二人の方に賞をあげられる、贈呈するというのは大変に自由報道協会としても映えあることだろうと思います。

それでは協会賞を発表させていただきます。
お一方はですね、これはもう皆さん、自由報道協会にいらっしゃる方は皆さんよく知ってらっしゃる。田中龍作さんですね。

田中さんのお仕事は、われわれいつも見ていて。インターネットメディアっていうんですかね。それよりも個人で仕事をしてらっしゃる方。どういう視点、大メディアですね、新聞、テレビ、まあ、そんなに大きくはないですけども、雑誌メディア。これと抗していくには、どういう視点が必要なんだろうか。そういうことを今回の受賞作品、写真ですけども。大変によく表している。

これは安倍(晋三)総理が、倉敷市真備町ですね。避難所を訪れたときに。私もテレビや何かで見ましたけども。被災者の方と安倍首相が大変にこにこ、にこやかに話をしているという写真で。「安倍総理もなかなかやるじゃないか」と。「彼もこういう表情ができるんだ」とですね。

私なんかテレビでそう思ったんですが。実はですね、安倍総理、まあ、その周辺がですね、カメラマンたちを安倍さんの前に全部並ばせて。そして安倍総理がにこっと「いかがですか?」と声を掛けるところを皆さん、「写真を撮れ」と。

まあ、われわれから言うと、「やらせ」ですね。しかし、テレビを見たりですね、新聞なんかを見てると、そういう仕組まれたもんだっていうのはやっぱりわかんないわけですよね。

それを田中さんはですね、安倍総理の後ろに回って。そのカメラマンたちが総理に向けて写真の放列を向けている。それで、その写真を撮った。というのをですね、1枚写真で見事に表してくれた。

私も『FRIDAY』という週刊誌の編集長を随分長くやりましたけど。1枚写真でなかなかいろいろなことを表すというのは、そう簡単ではないんですよね。
それを見事に。『FRIDAY』は今、この写真を見てですね。「ああ、われわれは何をしていたんだ」と反省しなきゃいけないと思うんですが。

まあ、そういうフリーの田中さんはそういう1枚の写真でわれわれに提供してくれた。これは素晴らしい。フリージャーナリスト、フリーカメラマンとして一番正しい報道の在り方だと思いますので。私たち全員これに賞を与えましょうということで一つ。田中さんに協会賞。

それからもう一方はですね、本間龍さん。
本間さんというのは皆さんご存じだと思いますけど。もともと博報堂にいらっしゃったんですよね。まあ、いろんな事件にちょっと絡んだりして。非常に辛い時期もあったようですけども。

まあ、本間さんが博報堂を辞めて。ちょうど東京五輪の、それが動き出して。電通を中心にいろんな噂が飛び交った。エンブレム問題もありましたし。まあ、今はですね、相当な大枚の金を招聘するために賄賂を贈ったんじゃないかということも言われてますけども。

博報堂ですから。電通の内情も知り尽くした方がお書きになるんだろうなと。最初は私は雑誌で拝読したんですけども。素晴らしい視点で書いておられる方だなと思ったんですね。

今回授賞の対象となったのは、やはり東京五輪。五輪側がですね、ボランティアを大変な数集めるという発表がありましたですね。私も聞きましたけども。

そのボランティアが無償。お金を払わない。ただ働きをさせるんだということを『ブラックボランティア』という本で全部お書きになった。
これ出たのは去年か、一昨年なんですかね。かなり早い時期に出されたんですが。

残念ながら、あまりメディアで。雑誌は別ですけども、新聞、テレビではあまり取り上げられなかったように記憶しております。

この問題は大変に根の深い問題ですね。私は東京都民なんですけども。東京五輪は絶対反対という立場ですが。何も今どき、東京五輪なんかやる必要は何もない。しかし、決まったからには、嘘をつき通して、何とか成功に持っていこうという今のJOC(日本五輪委員会)もそうですし、安倍内閣というんですかね、それから東京都知事。まあ、非常に無理をしていろんなことを進めてきた。

しかし、まあ、スポンサーになっている大手メディアというのはそういったこと、不都合なことはほとんど書かない。
まあ、そういう中で私はこの『ブラックボランティア』というのは素晴らしい視点でお書きになったなというふうに。出たときにはすぐ読みましたけども。

私は本間さんがこれまでやって来られたいろんな仕事に関して、私としては個人的にですけども、この賞をあげたいなというふうに思ったんですけども。まあ、なかなかそうは言っても、これは協会があげたわけですが。
田中さんと本間さんの2作が、今回、第8回の自由報道協会賞に輝きました。おめでとうございました。

山口 それではですね、受賞されました田中さん、本間さん、それぞれ前に出てきてください。
それでは代表の大貫より賞状と記念品、そして金一封が贈られます。

大貫 すみません。こういう二人の方に贈るというのは、ここ数年なかったんです。かなり緊張しております。
あらためまして、第8回自由報道協会賞。大賞、本間龍殿。あなたが著した書籍『ブラックボランティア』は2020年の東京五輪の無償ボランティアを募集することの問題点を指摘し、また、五輪の商業主義的構図を具体的に示すことで各所に東京五輪の在り方についての議論を促しました。こうした執筆活動を通し、ジャーナリズムの信用と権威を高めた行動の勇気を讃え、ここに顕彰します。平成31年4月23日、公益社団法人自由報道協会会長兼代表理事・苫米地英人。代表理事・大貫康夫。おめでとうございます。

田中さんも非常に実は。私も毎日のように田中さんのブログを見ているんですけども。まあ、まあ、なぜこれほど活躍されるのかなっていうくらいに。同じ文で大変恐縮ですが、名前だけにさせていただきます。
第8回自由報道協会賞、田中龍作殿。平成31年4月23日、公益社団法人自由報道協会会長兼代表理事・苫米地英人。代表理事・大貫康夫。おめでとうございます。

山口 はい、ありがとうございます。それでは受賞者の方から一言ご挨拶いただきたいと思います。
じゃあ、田中さんからいいですか。

田中 田中龍作でございます。この度はありがとうございました。私ごときがもらっていいのかというのがとっても疑問です。
日本新聞協会賞をもらうよりも光栄で嬉しいです。もちろん、もらえませんけどね。私ごときがもらえませんけど。

実はですね、なぜ今、この日本新聞協会賞を引き合いに出したかというと、加計学園の問題が起きたときですね。これは3月、今治市議会で3月3日に公金支出が決まったんです。このときに私今治市議会にいました。各社皆いたんだけど、これを「問題ある」っていうふうに書かないんですよ。普通に、ただ普通に「決まった」というだけで。

僕が『田中龍作ジャーナル』で、これはもう安倍の友達にもう130何億円か出るんだ、今治市の財政から。で、そういう書き方をして。日刊ゲンダイ、それから週刊誌がいくつか追い掛けてくれて。まあ、火がついたみたいな形になって。
そのときにですね、ある国会議員から言われました。

「全国紙の記者は田中さんに怒ってましたよ。『もう俺たちは知ってたのに』と」
そのあと、設計図の問題が出てきて、これは加計学園ですよ。ビアホールなんかあったりして、ふざけた話なんですよ。

その設計図をすっぱ抜いたときにですね、ある新聞協会側にいる大マスコミのですね、政治部記者からメールが来て、「新聞協会賞ものだよ」と言うんですよ。

で、「これは俺への当てつけか」と思って。まあ、そんな感じで今、引き合いに出した次第です。
ですのでね、自由報道協会があっての、本当にもっと自由報道協会がパワーがあったら、新聞協会賞を凌駕できるぐらいの力があって、日本の政治もここまでなってなかったんじゃないかと思ってます。

本当にありがとうございました。
それともう一つ。畏友の本間龍と一緒にもらえるなんて、こんな嬉しいことはありません。

山口 それでは続きまして、本間龍さん。よろしくお願いします。

本間 本間でございます。今日は素晴らしい賞を本当にありがとうございます。
先ほどご紹介いただいたんですけど、この『ブラックボランティア』はですね、昨年、KADOKAWAさんから出させていただいて。
まあ、それなりに「ボランティアがなぜタダなのか」というですね、まあ、非常に理不尽な話でございまして。

まあ、誰でも「理不尽だ」って、みんな薄々感じてるんだけど、誰も言わないという。日本特有のですね、素晴らしい文化があってですね。それを僕はもう関係ないんで書いてしまうという。

非常に、あと、やっぱり、元博報堂の営業をやっていた人間としてですね、構図が本当によくわかるんですね。儲けの構図が。
人をただ働きさせて。自分たちだけ利益を得るっていう。まさに電通らしい、素晴らしいやり方だなって思ったわけです。

まあ、それを書かせていただいてですね。こういう本を書いてるんでですね、いわゆる賞状とか、何か賞とか、そういうところからは全くお呼びが掛からない、そういう存在だと思ってたんですけど。今日、自由報道協会賞をいただいて。大変、本当に嬉しく思ってます。

何か大人になってからですね、賞状……。まあ、12年ぐらい前に逮捕状っていうのはいただいたことがあるんですけど(笑)。賞状というのはですね、いただいたことがなくてですね。大変嬉しく思ってるわけです。

もう、本当、田中龍作さんみたいにですね、もうジャーナリズムの王道を歩んでる方から見ると、僕なんかちょっとやっぱり、かなり「あっちのほう」にいる存在で。まあ、ちょっと自分がジャーナリストだと、なかなか言えないような存在なんですね。

ですから、本をこつこつ書いてるという感じなんですけど。うんと、一つだけですね、ちょっと、今までの受賞者の方と違う考えがあるとすれば、やはり、刑務所を出てですね、今年10年経ったんですね。

当然、刑務所から出てきた人間がですね、何かこう本を書いてですね、こういう場所に立っているというのは、多分、なかなか日本では珍しいことだと思うんです。

まあ、一つ、心の隅に覚えておいていただければと思うんですけど。日本って、刑務所を出てですね、また戻ってしまう方がだいたい半数ぐらいいるんですね、出所者の。でもまあ、出所して真面目にやっている方もいっぱいいる。そういう人たちがなかなか生きにくい世の中なんですね。日本というのは。

そういう中で、でも、僕は非常に恵まれていてですね。「生きにくい」というふうに思ったことがないんで。本当に今まで数々の出版社の編集者の方々にずっと助けていただきました。

昔、一番最初は学習研究社。それから亜紀書房。それから宝島社。それから岩波(書店)。それからKADOKAWAさんと。まあ、随分いろいろな編集の方にずっとお手伝いいただいて。皆さんですね、僕が出所者であるとかそういうことは全く、一切気になさらず。

ずっと真摯にお付き合いいただいていて。今に至るというところで。
そこはちょっと私の感慨が、作家的な感慨、ジャーナリスト的な感慨とはまた違う感想を今日は抱いております。本当に今日は大変嬉しい日でございます。どうもありがとうございました。

山口 本間さん、どうもありがとうございました。
それでは以上をもちまして、第8回自由報道協会賞授賞式を閉会いたします。会場の皆様、田中さん、本間さんにもう一度大きな拍手をお願いいたします。

山口 なお、自由報道協会賞は皆様の寄附で支えられております。ご支援いただける方は自由報道協会のホームページに詳しいことが書いてあるので、そちらをご覧ください。

 

 

シンポジウムテーマ「日本の政治報道の自由度を向上させるためには」

大貫 はい、それでは、これからですね、自由報道協会の「日本の報道の自由をいかに推進していくか」ということで。今回は政治家の方が3人、顔を揃えていただきましたので。時間の許す限りですね、政治家として日本に報道の自由がいかにないかということを。いろいろ体験されている、その点も話していただきたいと思います。

それから、受賞者の田中さんと本間さん、そして、安倍宏行さんもおいでいただいて。元フジテレビの解説委員の方でしたけども。シンポジウムを始めたいと思います。

このシンポジウムは結論を出すものではありません。今、日本で何が起きているのか。どうしてこんなことが報道されないのか。あるいはどうしてこんな報道になっているのか。それぞれの立場から疑問に思った点を話していただきたいと思います。

大貫 じゃあね、最初、受賞者から一言ずつ。まず、田中さんから行きましょうかね。今、報道、まあ、いろんな取材をしていて。日本の報道の自由はどうしてここまでおかしくなったんだろうという疑問をいくつか。いろいろあると思うんですけど、個々の具体的な体験を語ってもらえますか。

田中 私の体験なんて大したことはないんだけども。現場で聞いたことだけ話すと、まず、去年の2月だったかな。森友(学園問題)が弾けたときに籠池(泰典)さんが森友学園の校舎の前で野党議員を前にして、たくさん。あ、福島さんもあのときいましたよね。「安倍総理からの100万円が入っております」と。

福島 100万。

田中 100万でしょ。「安倍総理からの100万が入っております」という。あのとき、僕も現場におって。週刊誌の記者とあのとき言ったのが、「おお、これで安倍内閣吹っ飛ぶぞ」って。いや、本当にそれぐらいの衝撃でした。けど、びくともしませんでした。あ、びくとはしたか。

で、加計学園(問題)があったときも、これこそ何かあるんじゃないかと思って。やっぱり潰れませんでした。
で、今度は統計偽装があって。これも安倍政治のインチキ、ごまかしの象徴ですよね。それでもまた潰れませんでした。

どうも見ていると、ある国会議員、野党議員。この人は加計、森友に関して一番質問の多い議員さんで。野におる。落選の憂き目を見てます。2018年のモリカケ隠し解散のときですね。

その野党の議員さんから言われたのは、全国紙の新聞記者。さっきも話しましたけどね。「怒ってますよ」と。「俺は知ってたのに」と。
これって40年以上以上前になるか。立花隆が田中角栄の金脈追及をしたときに各社の記者が「俺たちも知っていた」と。それとまた同じことが今起きてるんですね。何か知ってても書かないというか。

それと、「アベノミクス偽装」で思うのが、マスコミの記者が現実を知らなすぎると思うんですね。現実知ってたら、実質賃金が上がってるとか、GDPが上がってるなんて思いっこないんですよ。現実を知ってたら。人々はこんな苦しい生活してないんですよ。

だから、そこらへんが何か。マスコミがやはり視聴者だとか読者離れを起こしているのはなぜかというと、記者の意識というか想像力がなさすぎる。現実を知らなさすぎるというのがあると思います。

大貫 では、本間さん、また一言。最近気づかれたことについてお話を。

本間 そうですね、やっぱり。今、田中さんがおっしゃってることと似てますけど。僕の場合で、いくつもいろんなパターがあるんですけど。『ブラックボランティア』に引っ掛けて言いますと。

やっぱり、「ボランティアに一銭も払わないっておかしいよね」っていうのはどのメディアの記者たちもみんな「うん、うん」って言うんですよ。「そうだよね」「ですよねえ」ってしゃべってる。っていうんですけど、「じゃあ、『ですよねえ』って言ってるお前、書けよ」っていうと、書かない。ていうか、書けない。

「僕もそう思いますよ」って言うんだけど、じゃあ、それがデスクとか、編集の段階まで行くと、「そういうのお前、もうちょっと大人になれよ」みたいな感じでですね。載らない。

ということで。何というんですかね、僕ら、僕らというか、ちょっともう少し前の時代にはいわゆる記者とかがですね、自分で自分の原稿を自主規制する。保身というのかな。そういう言葉があったと思うんですよ。

それはやっぱり、記者さんとか作家は忌むべきことだったと思うんですけど。今は何かそういうのもないんですよね。保身であるとすら思ってないというか。
「まあ、確かに本間の言ってることは本当なんだけど。書くと面倒くさいからいいや」みたいな。割と軽く流していく。

だけど、僕の言っている話というのは、ボランティア11万人でですね。さらにこれからどんどんどんどん各地で。ボランティアというのは東京で登録されている以外の人たちもいますからね。

ですから、これは15万人、20万人とどんどん増えていく。国家総動員につながるような話なので。やっぱりきちんと「これはおかしいでしょ」っていうのは僕みたいな本書きというか、そういう者ではなくて。本当であれば、やっぱり大新聞とかがね、追及すべき話だと思うんですけど。

まあ、大新聞がみんな潰れそうになっちゃってるんで。そういうのも一体どうなんだっていうね。そういうことが恥ずかしげもなく行われているっていうか。
びっくりするようなことが平気で行われているというのはちょっと今の時代、特に日本の報道が劣化してるっていう。そういうのは感じますね。

大貫 はい、ありがとうございます。それじゃ、福島さんと藤田さん、どちらから最初?

福島 どうぞ、どうぞ。

藤田 いや、どうぞ。

大貫 では、政治家からの視点で自分は報道でこういう体験をしたと。藤田さん自身、実は大変な報道被害に遇った人でもあるんですけど。それをご本人が言えるかどうかは別として。最近のことについて。藤田さん、いかがですか?

藤田 これですね、私、この前、国会の委員会で使った紙なんですけれども。実は米国の「ホロコースト記念館」ってございまして。そこに「ファシズムの14の初期警報」って書いてあります。
つまり、ヒトラーなりがですね、権力を掌握した場合に、共通の兆候があったと。この左っ側の赤いのがそうですけども。

「強力な国家主義」「軍隊の最優先」。これ、日本ではですね、(憲法の)解釈を変えた。集団的自衛権の行使はそうでした。
それから「犯罪取り締まりと刑罰への執着」。これは特定秘密保護法案と共謀罪。この二つは歴代の自民党政権と異なる政策をいわば強行採決で決めた。

次に一つ飛ばしまして、「身びいきと汚職の蔓延」。これ、森友・加計問題そのものですね。忖度。で、日銀総裁、内閣法制局長官など、これは霞が関人事で決めてしまっている。

次にですね、「法治主義から人治主義、身びいき主義」と書きましたけれども。団結のために敵やスケープゴートを作る。これは例えば、前川(喜平)前文部科学事務次官に対して人格攻撃をしました。それから、麻生(太郎・財務)大臣(・副総理)ですけれども。私が質問したのに対して、「佐川が」「佐川が」「佐川が」「佐川が」と。これは人格攻撃です。

それからですね、「不正な選挙」。実はヒトラーが最終的に権力を掌握した際にはですね、選挙を連発しました。
で、これはですね、選挙を連発しているところも安倍さんに似ているんです。で、こういう中の14のうちの一つが真ん中へんに書きましたけど、「メディアの統制」。

これがまあいろいろと。この間も望月(衣塑子・東京新聞社会部記者)さんがおっしゃっていたように、NHKの会長がニュースキャスターの交代などなど。

ですから今、行われていることは単にメディアの統制だけではなくて、ファシズムに至る大きな手段としての統制だということを私は位置付けたい。これはもう国会でもやりました。

それからもう一つはですね、私が非常に関心を持っているのは、『ジャパンタイムズ』。私も結構書かせていただきました。
つまり、記者クラブがあって。まあ、いわゆる一般紙などはですね、まあ、官邸の下請けみたいになっている中で。『ジャパンタイムズ』だけはかなりリベラルに書いてました。

私が書いたような原稿もですね、載せていただいてました。ところが経営者が変わりました。それに基づいて、何か『ジャパンタイムズ』が安倍官邸の御用新聞であるかのようになってしまいました。

加えて(東京)アメリカンクラブってあります。ロシア大使館の裏(東京・麻布台)に。これも実は日本人の、いわゆる賛助会員が増えたことによって、自由な発信ができなくなっています。

それから去年の10月ですか。(日本)外国特派員協会が電気ビル(東京・有楽町)からお堀のほうに近くなりました(東京・丸の内に移転)。これもですね、外国人の方が自由な発信ができるものが実はかなり制限されています。

数年前に女性の大臣が、山谷えり子が外国特派員協会に行って批判を浴びてから、官邸は閣僚を外国特派員協会に送ってないんです。実質的に規制をしています。

従って、まず一つは外国特派員協会のグレードを下げました。その上で、実は今回移るに当たってですね、日本人の賛助会員が増えたことにより、かつ数年前に法人格を取ったがゆえに、政府のコントロールが強くなっているので。外国特派員協会がかなり自由な発信ができることがなくなってしまった。

ということはアメリカンクラブ、外国特派員協会、『ジャパンタイムズ』ということで自由な報道をする外国人の発信が非常に削がれてきている。ということは記者クラブで制限をされ、一時は民主党政権のときに外国人の記者と週刊誌も官邸に入れました。

ところが、上杉隆さんが言っているように、それができなくなった。ということは人事、それからシステム上も自由な報道ができなくなっているという背景がファシズムへの道強化の中で進んでいると。これが大きな流れの中で重要だということを強調しておきたいと思います。取り敢えずは。

大貫 藤田さん、ありがとうございました。

福島 参議院議員の福島瑞穂です。私はメディアのことを、内情はあんまりわからなくて。確かに『ジャパンタイムズ』の経営者が変わって、(紙面が)全く変わったとかですね。というようなことはとても思ってますし。NHKの報道などについては思ってます。

ちょっと私自身は体験したことを何点かお話をします。
私は今、(政治評論家の)屋山太郎氏を相手に名誉毀損裁判をやっていて。『静岡新聞』の「論壇」ですかね、論壇というところに屋山太郎さんが私のことを「徴用工の裁判をやったのは福島瑞穂だ」と。それから「実妹が北朝鮮にいる」と。

公私混同じゃなくて、「そういうふうに私的なことに使うのは反則だ」ということを書いたんですね(正しくは「政争の具に使うのは反則だ」と記述)。

でも、私は実妹もおりませんし。妹がいないんですよ。それから実は徴用工の裁判もやったことがないんです。
で、それは本人(屋山氏)は「勘違いだった」と言ってるんですが、私は結構これ、インターネット上でいろいろ言われることもあるけど、それは裁判をやってると、いずれやりたいと思ってますが、ただ、これ(屋山氏の論考を掲載した媒体)は『静岡新聞』なんですよ。

つまり、普通の新聞の「論壇」というところに載っていて。普通はそれ、ちょっと確認するでしょ。「これ、本当にそうですか?」。私、実妹がいない、妹がいないので、そもそも。びっくり仰天というか。

で、本人は「勘違いでした」ということなんですが、これってでも、64万部ある日刊紙に堂々と載る。だから、私が「これはおかしい」と言わない限り、それは事実として流布してしまうというのに、やっぱり新聞自身における劣化というのを思ってます。

私自身は安倍総理は第一次安倍内閣で辞任をせざるを得なくなったので、反省ノートをつけて、メディアと教育に対する介入とコントロール。国会議員に対してもやる。で、役人に対しても内閣人事局で牛耳るっていうことをやっている。

そして、官邸はかなり警察っていうかね。「官邸ポリス」ですね。っていう形になっていて。本当にいろんなところでやっていると。
私はちょっと国会議員の立場から言うと、望月衣塑子さんの(質問に対して)、(菅義偉・内閣官房長官の定例)記者会見のときに(菅氏が)「あなたには答えません」とか言うのを、ある女性の記者が官邸前の発言で「これは面前DVだ」と言っていて。(私も)「そうだ」と思います。

私は(安倍内閣は)そういうことをありとあらゆるところでやっていると。つまり、NHKの(『クローズアップ現代』でキャスターを務めた)国谷(裕子)さんが(番組を)降ろされたり。あと、もう亡くなりましたが、(元毎日新聞社主筆の)岸井成格さんががんで亡くなられたけど、誰かをターゲットにすると、彼なんかもバーンと新聞に書かれたり。

一面広告されたり。そういう心労も本当にあったんじゃないかと。そういう意味では(政権による圧力は)すごくメディアに対するのもあるし。
国会議員に対しての圧力はすごくあると思っています。

実は細かいことなんですが、私はいろんなことで、他の人もそうですが、割と(自分の発言に関して国会の議事録からの)削除要求を受けていて。一番あれなのは、2015年、「戦争法」と言ったら、これ、削除要求を受けたんですよね。
戦争法という言葉は国会でいっぱい使われているんです。「周辺事態法」も使われていて。

ちょっと長くなってすみません。(元首相の)小渕(恵三)さんが(在任中の)当時、共産党(の国会議員)が戦争法と周辺事態法と言ったら、「御党が戦争法と言うのはわかりますが、私たちはこう考えています」と言ってるんです。そのときはまだ議論があるわけですが、もう(最近では)戦争法ってのは削除要求(の対象)です。

でも、「鉄面皮」っていう。「そんな都合のいい数字ばかり挙げて、鉄面皮だ」って言ったら、これも削除要求を受けました。
でも、戦後、51回ほど鉄面皮という言葉が議事録に載っていて。ある社会党の議員は自民党のことを「嘘つき、ペテン師、詐欺師、いかさま師、鉄面皮」と10個ぐらい言ってですね。「これが自民党政権だ」って言って、(その発言は議事録にそのまま)載ってるわけです。

だから、それはそういうふうに言って削除要求することで、やっぱ(野党議員の発言を)抑えてるんですよね。
私、加計学園の(問題)を初めて(国会質問で)聞いたとき、安倍総理は「福島さん、名前出しましたね。あなた責任取れるんですか?」と言って。

(私は反論して)「どうして国会議員を恫喝するんですか? 私たちの役割は権力をチェックすることです」と言ったけど。気が弱くなくてよかったと思うけど。

あと、そういういろんな言葉が削除要求を受けている。「先ほどの福島瑞穂さんの発言に不穏当なところがありましたので、後刻、理事会で協議します」となるんですが、この(頻発する削除要求の)ミソは予算委員会(での発言に対して)だけ(行われていること)なんですよ。

同じようなことを(予算委員会以外の委員会で言っても、削除要求は来ない)、例えばこの間、「現代の奴隷制度たる技能実習制度は」と言ったら、この「『現代の奴隷制度』という部分はいかがなものか?」となって。

「そんなの厚生労働委員会でいっぱい言ってるよ」と思うんですが。安倍さんがいるところで、安倍総理がいるところで質問すると、「わーっ」と与党の理事が言って、「先ほどの福島さんの発言に……」(となる)。

つまり、だんだん野党が突っ込んだり、ガーンと言うのが(難しくなってきている)。「嘘つき」と言ってですね、ある国会議員が「嘘つき」って言ったら、「『嘘つき』とは何だ」ってなったけど。昔の議事録を見てたら、「嘘つきだ」「詐欺師だ」「ペテン師だ」とさんざんっぱら言っててですね。国会はもうどんちゃんどんちゃん華やかにバトルをやってますよ。

それが当たり前でしょって。耳の痛いことを言うのが国会で。権力をチェックするのが国会なんだけど。メディアと国会、野党に対して、望月衣塑子さんに対する菅さんもそうですが、安倍さんの予算委員会の態度がそうだけど、「俺を不愉快にするような質問はやらないでくれない?」っていう感じですよね。

もう、それってやっぱり何か「DV政権」だと実は思っていて。こういう構図そのものを変えないといけないし。これ、慣れっこになってると、すごく社会が壊れていくと思ってます。
ちょっと散漫になってすみません。しかも、長くしゃべってすみません。以上です。

(福島氏はここまでで降壇)

大貫 ありがとうございました。「報道の自由」でなぜ、政治家の方々を呼んだのかと思われる方もおられると思うんですが、実は先月ですね、ノルウェー大使館に呼ばれましてね。ちょうどノルウェーの家族や子育てに関する委員会がありまして。その議員が十何人か来ました。
で、「日本の報道の自由はどうしてこういう状況なのか、ぜひ話を聞きたい」ということだったんですね。それに応じてですね、話したんですけど。

最後に、この方は保守党の女性のこの委員会の委員長でした。
「私たちにできることは何でも言ってくれ」と。「できることは何でもする」と。政治家がそう言うんですよ。

「報道の自由がなかったら、社会全体がおかしくなる」って言うんですね。こういう意識を持ってるんですね。保守党ですよ。ノルウェーの保守党の政治家でしたけど。

日本でもようやく報道の自由がいかに政治の分野でもこれがなくなるとおかしくなっているかを今、福島さんがおっしゃいましたけど。そういう意識を持つ議員が増えてきました。これは一つの希望だと思います。

お二人は本当に時間のない中、ありがとうございました。
杉尾さんの前に安倍さんに気づいた点を。別の視点から話していただきたい。

安倍 いろいろなご意見が出たと思うんですが。私、前職がフジテレビの解説委員。57歳のときに辞めまして。「ジャパン・インデプス』というウェブメディアを立ち上げました。

その趣旨は解説、継続報道、もしくは調査報道といいますか。まあ、テレビの世界が長かったもので。テレビのニュースというものは非常にまだ断片的で継続性がない。それからバックグラウンドの説明がないと。分析がないということを非常に危惧しておりまして。

解説をやっていっても、しゃべれる時間は本当に。ニュースの解説って30秒ぐらいなんですよね、実は。何かすごい長いことしゃべっているように見えますけど。だいたい視聴者の耐え得る時間ってそんなようなものなんですね。それ以上しゃべっていると、「何を長々こいつはしゃべってんだ」というような感じを視聴者の皆さんは抱くんですよね。

まあ、そういう意味で細切れ。でも、30秒で全てを伝えることなんてできないわけですから。やっぱり、テレビというメディアはちゃんと物事を伝えようと思ったら、ストレートニュースとは別に長尺ものの報道番組というものを作らないといけないんですよ。

かつてどの局も似たようなものはありました。例えば、フジテレビで言えば、「新報道2001」とか。TBSはまだ「報道特集」がかろうじて続いてますけど。そういう類の番組はどんどんどんどんなくなってきちゃってるんですね。

私が「テレビ報道の自由」ってことについて言うと、その報道の自由を自らそのテレビ局が放棄しちゃってるという感覚を抱いていますね。
先ほど本間さんからね、自主規制、保身、それから面倒くさいことを避ける、というような話が出ましたけども。これも本当に当たっていてですね。実際に現場の記者は「どうせこんなこと記事に書いても、番組側が載せてくれるわけがない」とかですね。「いろいろ面倒くさいことになるから、敢えて書かないんですよね」みたいなことをOBの僕に言ったりするわけですよ。もう信じられない話ですよね。

「記者が自分で取材して、それを書こうとしない」というようなことがですね、実はもう15年前くらいから。私が管理職をやっているころから、だんだんとそういう声を聞くようになってきました。

つまり、その番組サイドですね。テレビの内情を言うと、記者を抱えている取材部とですね、放送する番組部と。ラインとスタッフみたいな関係であるわけですよ。あんまりテレビ以外の人はそのへんよくわからないと思うんですけども。
まあ、どっちも「元記者」だったりもするんですが。立場が変わると全然変わる。

つまり、番組側は視聴率という数字を分単位で追い掛けてますから。数字が取れないニュースというのはどんどんどんどん排除していくんですね。でも、それは取材部側が戦わないといけない。

「こんなのあり得ない。俺の取材したものは絶対放送しろ」というせめぎ合いが20年以上前はあったんですよ。ところが、15年ぐらい前からどんどんどんどんそういうのが減ってきて。

記者側が「あ、放送されないんだったら、もう取材もしません」、もしくは「取材しても記事書きません」というような話になってきて。これを劣化と言わずして何と言おうというような話でありまして。
「報道の自由を手放しているのは実はテレビ側なんだ」ということをまずは私は言いたいと。

 ありがとうございます。杉尾さん、一言また。

杉尾 はい。

大貫 元TBSのキャスターでもありますから(笑)。

杉尾 「私は今日どちらの立場で発言すればいいんでしょう?」という(笑)。非常に立ち位置が難しいんですけども。
いろんな論点があったんですけれども。私自身が突き詰めていうと、やっぱり、権力、政権の側の問題と。それからメディア側の問題と。両方あると思うんですよね。

今、安倍さんがおっしゃったのは後者の問題で。私もよくわかります。一言で言うと、「事なかれ主義」なんですよ。「面倒くさいことはやめておこう」ということなんですよ。それは自分の出世にも関わることだし、会社で言えば、「商売の邪魔になる」からですよね。

私は岸井さんが降板した経過、あのとき私はまだTBSにいましたけど、やっぱり数字が悪かったわけですよ。それで岸井さんはいろいろ政権からも目をつけられているし。まあ、数字が悪いんで、「番組変えましょう」と。「キャスター替えましょう」と。これは経営者の側の論理ですよね。それに現場が抵抗できない。

一人一人、今、「劣化」というお話がありましたけど、私は劣化というより「退化」だと思っています。というか、ジャーナリズムが自分で自分たちの首を締めてるんだと思うんですよね。

もともとは日本のメディアというのは村社会で。これは村社会のまさに象徴が記者クラブ制度にあるわけなので。「この村社会の中で村八分にされずにうまく立ち回るようにするにはどうすればいいのか」というのがもともと日本のメディアに染み付いた体質で。

ま、それがさらにどんどん進んでいると。鶏が先なのか卵が先なのかは難しいんですけど。まあ、そこに輪を掛けているのが権力側の姿勢で。これはもう藤田先生がおっしゃった通りだと思います。

こんな独裁的で強権・強圧的な政権はないですね。ただ、(第)一次(安倍晋三)政権が失敗しましたんで。先ほど福島さんの話もありましたけれど。あのとき、安倍さんはいくつか学んで。そのうちの一つがジャーナリズムというか、メディア側をいかにコントロールするかという。

だから、そういう意味では非常にスピンコントロールに長けている。それをサポートする菅官房長官であったり、官房副長官の杉田(和博)さんであったり。それをサポートする態勢ができていて。それがお互いに相まっていってですね。状況が急速に劣化をしているというふうに思います。

私も総務委員会で質問したり。実は明後日、総務委員会で(NHKの)板野(裕爾・専務)理事の復帰の話をちょっと。相当しっかりやるつもりなんですけれども。

あれなんかまさにそうなんですが。国会で例えば、モリカケでもいくらやってもね、駄目なんですよ。これはもう手を替え品を替えやってるんですけどね、駄目なんですよ。

それは「野党が力がない」と言われれば、そうなんだけど。ただね、自分がメディアの世界からこっちに来て思うんですけど。権力側が何をしてもね、どんなことをしても自分たちを守り抜くと決めたときにはですね、それを打開する術というのは極めて難しいという。もう、これはもう実感です。

何を質問してもね、歯が立たない。向こうは強大な組織ですから。全閣僚がみんなバックについてるんですから。言い逃れの仕方から嘘のつき方から資料の廃棄まで全部やるわけですよ。本人が言わなくてもね。

そういう機構をですね、相手に立ち向かうというのはやっぱり大変。ただ、諦めてはいけないので。ジャーナリズムの基本は個人だと思ってますので。一人一人が頑張らないと、悪化する状況を食い止めることはできないというふうに思ってますので。私は諦めませんけども。
そういう実感をお話ししまして。私は。

大貫 ありがとうございます。今の杉尾さんと安倍さんのお話を聞いてますと、結局、われわれジャーナリズムの側が安易に妥協してしまう。また、逆に押し戻そうという努力がない、意欲がないというところが最大の問題かなと思ってはいるんですが。

実は山口さん、報道協会の理事ですけど。元『週刊朝日』の編集長。まあ、あのころの『週刊朝日』は楽しかったんですが。
山口さんからマスメディアにいて、そしてまたこういうふうにして。気付かれた点、ありますでしょうか。

藤田 ちょっといいですか。すみません、失礼するんですが、一言だけ。実は先ほど話が出ました立花隆さん。実は私の水戸一高の先輩なんです。で、森友・加計をやった福島伸享(前民進党衆議院議員)。水戸一高の後輩。で、たまたま水戸一高というのはそういうわけで、大変まあ、根性のある立花隆さん、福島伸享というのがいるんですけども。今、立花さんもあまり活動があれなんで。福島も浪人中なんで。その分もまだ──。

田中 この間会ってきましたよ。

藤田 そうですか。頑張らなければいけないと思っておりますが。そういうことも含めて、強大な権力に。福島も今、犠牲になってますけど、頑張りたいということだけ申し上げたい。すみません。

(藤田氏はここまでで降壇)

大貫 実はこの問題、いろいろなところで話し合ってるんですけど。じゃあ、どうするかと。ある米国人と話をしましてね。割と楽天的なんです。「なぜ成功体験を伝えないのか?」と。あるとき、成功体験というほどでもないんですが、こういうふうなことをやったら、こういう結果が出たということを話したら、「それは自慢話だ」と言うんですね。

そういうふうになってしまうと、せっかくの話を、こうすれば、こういうこともできるんだということの可能性を閉ざしてしまうんですね。そういう考え方が日本中にあってですね。なぜ、いい話を聞こうとしない。

失敗は失敗として、こういう話でこういうふうに失敗したのかと。米国は実は失敗を売り歩く、失敗体験を講演で、あるいは本にしたりして売り歩く人たちがたくさんいるんですね。それくらい米国人は失敗体験も聞くんです。それから、成功体験。どういうふうにして成功した。それも聞くんです。両方聞くってことも絶対に必要だと思うんですよね。

それぞれが「ああ、こういう道があるのか」とか、「ああ、こういうことをやったらあれなのか」とか。両方あるんですね。それが必要なんですね。

実は私、山口さんが『週刊朝日』の編集長のころからですね、「『朝日新聞』はこの人をちゃんと遇しないから駄目だな」という。実は判断材料の一人にして。山口さんの人事を「なぜ、あの『朝日新聞は』こんな馬鹿な人事をしたのか」と。彼のような素晴らしい人を手放してしまったんですよ。山口さん、一言。

山口 ちょっとだけ違う視点の話を一つだけしたいと思います。先ほど、皆さんからの話で「昔はもっと気骨があった」「気骨がある記者がいた」とか。そういう「権力に対して戦う人たちがいた」という話がよくありますよね。

報道の自由が失われているんではないかということに対して、まあ、近視眼的に考えると、今の政権が非常に強権的であると。安倍政権がそうじゃないかという話があります。

だけど、権力者がメディアをコントロールしたいとか、情報をコントロールしたいというのはすごく当たり前のことで。これは別に安倍政権に限ったことじゃないと思います。いろんな政権、もちろん、民主党が政権を握っているときだって、民主党政権はメディアをコントロールしたと思います。

つまり、それに対してどうやって対抗できるだけの報道する側。ジャーナリズムとかメディアというですね、まあ、あるいはメディア企業に力があるかということなんですね。

で、さっき言ったみたいに「昔は」って言うんです。僕も40年近くメディア、主に週刊誌、雑誌なんですけどね。ほとんど雑誌です。雑誌の世界で仕事をしてきて。そのころが、私が駆け出しのころと今と決定的に違うところがあるんです。売上です。
もう全く、要するに「だから弱腰になっている」っていう言い訳なんですけどね。でも、これってものすごく実は大きなことで。

週刊誌では元木先輩の(『週刊現代』編集長を)やっているころは100万部とか。まあ、そういう世界だと思いますけど。僕が『週刊朝日』を引き受けたころはもう「20万部死守」みたいな感じです。『週刊朝日』に入ったころは40万部。かつては150万部売ってました。そのくらい下がっちゃってるんです。

出版っていうものの売上も2兆円だったものが1兆円まで下がってるんです。恐らくテレビ局のコマーシャルの売上も落ちてるんじゃないでしょうかね。わからないですけど。

安倍 横ばい。

山口 あ、横ばいですか。
まあ、というようなことで。要するにそういうしわ寄せがほぼほぼ現場に落ちてくるんですね。それが多分、忖度しやすい気分とか。さっき言った面倒くさいことを嫌がる、忌避しようとする現場の会社員。まあ、会社員って申し訳ないんですけども。ということにつながってくる。
管理職や上司からはそういうことを言われる。で、対政治ももちろんそうなんですけれども。対スポンサー、企業ですよね。

まあ、雑誌で言うと、雑誌に広告を出してくれる会社。で、僕が入社したころは編集部の人たちは全然、全く、一切そんなことは気にしていません。で、どんな会社が広告を出してくれるか。記者はもちろん、編集者も。ひょっとしたら、編集長も知らないぐらいな世界でした。

でも、それがどんどんどんどん変わっていきました。で、今ではもちろん、編集長はね、どこの広告が入ってて。表4がいくらとかね。そういったことまで頭の中に入って、日々仕事をしているっていうぐらい変わっちゃってるんですね。

これは何だろうな、ここで言っても、ちょっと悔しいんですけど。「人が情報とかニュースとか記事に対してお金を払ってくれなくなっちゃった」っていうことなんです。新聞なんかもろにそうですよね。新聞の部数もどんどん減ってます。

宅配の、特にマンションが1戸建つと、昔はそれを読売と産経と朝日と毎日で分け合うみたいなことをやってたんですけど。(今は)そのうちの10%の家が新聞を取る。それを各社で分け合うみたいなね。ま、そんなふうな状況になってます。新聞の部数の落ち方って甚だしいです。

それから、同時に新聞に入っている広告。もうピークの半分以下です。それぐらい経営的にも厳しくなっているので、どうしても経営者や管理者がそういう周りに対する目配り。「企業を怒らせてはいけない」みたいなことですとか(笑)。

例えば、企業批判の記事があるとしたら、「本当にこれ大丈夫なんだろうな?」っていうのが何重にもやられて。やっと日の目を見るか、見ないか。みたいなことが僕が会社を辞める10年ぐらいの間に起きていて。それはもう自分が駆け出しのころには全く考えられなかった。

新聞記者は広告のことなんか考えちゃいけない。当たり前ですよね。でも、最後には新聞記者が広告の記事を書いているようなぐらい。極端な言い方をすると、世界が変わってきてしまっているということで。

これ、どうしたらいいかというと。あ、僕、よく言うんですけど。報道の自由って民主主義の根幹だと思うんです。ということはね、民主主義のコストは誰が払うか。報道の自由のコストを誰が払うんですかっていう。多分、問題で。

視聴者とか読者の皆さんも少し考えてほしいなっていう。ただが当たり前なんです。
あるときね、大学生を前にこういうふうな形で講演をしたときに。メディアに就職が決まった人たちです。

「新聞社のデジタルメディアってユーザーフレンドリーじゃありませんね。どうしてですか?」と。「いや、記事がデータベース化されてなくて、どんどん消えていってしまう」と。

で、「あ、すみません。それ、データベースにしたのを有料でやってるんです」と。有料でやってるんです。ただで見られるのは消えていったり。要するにアーカイブされてないんですね。「アーカイブが見たい人はお金を出して会員になってください」と。そういうシステムなんです。

で、「まあ、ユーザーフレンドリーじゃないけど、それは君の給料の、飯のタネなんだよ」って言って、初めてその子は気がつく。「あ、そうですよねえ」と。というようなことに構造転換してきちゃったので。

じゃあ、どうしたら、ジャーナリズムとかメディアがマネタイズできるのかということを真剣に考えないと、この圧力に対して戦っていくってことはなかなかできないかなっていうことを感じてます。

大貫 今、山口さんが話されたこと、これは世界共通の問題で。インターネットの普及とともにですね、無料のメディアというか、実は新聞や週刊誌のあれをそのまま丸写しとかですね。ただで利用していることなんですが。ようやく著作権上の問題になってきてですね。

それから米国も貧富の差が激しくなって。地方が大変疲弊してくるんですね。地方紙がバタバタと倒れるんです、インターネット時代。持たなくなって。

結局、支えるコストが掛かる。そうすると、中産階級に膨大なあれが必要なんですね。余裕があって、ちゃんとお金も、時間的にも。いろんな形で余裕のある人が初めてそういう知的活動に参加できる。新聞を読む、週刊誌を読む、テレビを見ても考える。そういうことができなくなってくる。

恐らく政治にも、ものすごく関わってくるんですよ。今、山口さんのお話でも、裏に必ず政治の変化があるということもよくわかるんですね。それで、その中でいろんな米国では打開策を考えて。その中で新聞では唯一、経営が持ち直しているところがあるんです。『ニューヨーク・タイムズ』ですね。

これはもうはっきり視点を明らかにして。自分はトランプのあれを完全にやりますと。CNNもそうです。それによってどんどんどんどん他の新聞に出ないようなところを出してくるんですね。それを引きつけるんです。

それと同時にインターネットをうまく立ち上げました。そのインターネットを山口さんがおっしゃったようにちゃんと活用して。もっとインターネットを活用する欧州のメディアでは、いまだに無料でやってます。ですから、いろんな意味で過去の事例をきちんと引けるんですね。そうすると、また参考になるんです。

どちらの道を行くのかわかりませんけど、これ、報道の自由とですね、まあ、中産階級、大きな貧富の格差の是正。これは大きく関わっているなということをつくづく感じますね。
安倍さん、どうでしょうか。お辞めになってからこの間、そういう感じの変化というか。

安倍 うーん。つくづく、自分でインターネットのメディアを運営していて。「マネタイズっていうのは本当に難しいな」って思いますよね。
一つにはやっぱり、巨大プラットフォーマーの存在があると思いますよね。日本で言えば、ヤフーですよね。ヤフーというのは月間100数十億ページビューということであって。そこにまあ、全ての、日本のほぼ全てのテレビ、新聞、雑誌、週刊誌がですね、記事を提供しているわけですね。提供者ということでヤフーは取れているわけです。微々たる提供代をヤフーは払ってるわけですけども。

やっぱり、このままいくと、ちっちゃいところはどんどん潰れていっちゃいますよね。私どものこんなちっちゃいニュースサイトでも月間でですね、サーバー代であるとか、原稿料も払わないといけないじゃないですか。ということを考えると、数十万〜100万円近いお金がどんどんどんどん出ていくわけですよね。

でも、その記事を読んでいる人はどんなにユニークで面白い記事でもびた一文払わないんですよね。そういうふうになっちゃってるんです、もうね。

だから、そういう意味において、インターネットのメディアといえどもですね、情報発信は可能になったんだけども、質のいい記事をどうやって届けていったらいいのかっていう問題があるんです。

そこにやっぱり山口さんが今言ったマネタイズの問題というのはずっとついて回る。これはプラットフォーマー側がある程度考えてくれないと、どうもならない 部分があるなというふうに考えていて。最近、ヤフーさんなんかは記事に課金をするようなシステムを作り始めています。まだまだ端緒についたばかりで、それがどういうふうになるのかわかりませんが、そういうのが一つの試みとしてあると。

もう一つはですね、情報の受け手ですよね。今のデジタルネイティブといいますか、スマホで簡単にニュースをプラットフォームもしくはニュースアプリで。『スマートニュース』あるいは『グノシー』とか。いろいろありますけど。

そういうものでパパッとこう見出しを見られるわけですね。『ラインニュース』とかですね、プッシュ通知で速報がパッと来るわけですよ。それで終わっちゃうんですね。そこで一切、情報の受け手は見出しのURLを開こうともしないわけですね。
だから、結構スピードの伝播力は速くなってるんです。スピードは、伝播のスピードは速くなってるんです。

だから、「今、ノートルダムで火事だよ」と。ものすごい、多分、フランス人より日本人のほうが先に知ってると思いますね。ほぼほぼリアルタイムで知ってる。でも、それがどういう背景でどうなのかっていうようなことはわかんない。

『ラインニュース』の人に聞いたんですけども、結構ですね、1日に何回か発信しているときに5ニュースぐらい来ますね。パパパッて。そのうち、結構重要だなっていうのを一つ混ぜてるんだって言ってました。あとはですね、「まほほんのNGT涙の会見」とかね(笑)。そういうのなんですよ、だいたい。それで見ちゃうんですよ、これまたね。私も見ちゃうんですよ。「誰だろう、まほほんって?」と思って見ちゃうわけですね。

それで芸能ニュースをおじさんが知るという意味では一定の貢献をしているのかもしれないんだけど。もっと重要なニュースがいっぱいあるわけですよ。
(他のパネリストに)あ、知らない? 知ってたほうがいいですよ。

ということで。そういう情報の受け手側の問題もあるんですよ。受け手側も劣化してるんですよ。
なので、あまりにいっぱいの情報が来るので。もう知ろうともしないんです、今、学生さんというのは。当然、新聞も読んでませんし。

結構『ラインニュース』だなんだって、そういうのの見出しに支配されてるっていうのは怖い。だから、物事を考えようとしない、知ろうとしないという。
そういう双方の、情報の発信側のマネタイズの問題と受け手の側の問題っていうのがあると思います。

大貫 今の安倍さんのお話、ちょっと「おっ」と思ったんですが。ノートルダムの火災の現場のパリの、フランス国営テレビで。その翌日にものすごく寄附金が集まるわけね。こういう記事を出したんですよ。「これだけ寄附金が集まる。ノートルダムのね、火災の。もっと困ってる人たちへの寄附は一体どうなってるのか?」と。

マクロン政権になって、金持ち優遇になって。金持ちが寄附をしてもあまり意味がないような税制にした。極端に減ったんです。
じゃあ、最も困っている人。貧しい人や弱い立場の人、そういう人たちはどうなんだと。そういう議論を出してきたんですね。

フランスの国営テレビですよ。これは私はそこで彼らの意地というものを感じました。
それは日本の、ようやくNHKも他のテレビ局も今頃になって他のことを言い出しましたけど。

一方的にわーっとやらない。必ず引いた目があるんですね。私はその中で個人で小さいメディアで奮闘している田中さんにはその視点がある。彼は出すんです、いつも。今回の受賞もそうなんです。マスコミに踊らされないで、別の視点から見る。

そういうところでね、最近ね、別の視点で。マスコミが取り上げようとしない視点から。今、問題となっている。この間もちょっと出してましたけど。ちょっとおっしゃってもらえますか。

田中 そうですね。最近取り上げたので、マスコミが全くやらないのは、JRのですね、労働強化。まあ、合理化。要するに儲けるためですね。労働強化して、合理化して。それがために運転士がですね、過労になってるんです。仕事時間が増えてですね。

簡単に言ったら、これまで運転士は山手線の1日5周でよかったのが、6周になったりしてるんですよ。最近やたらオーバーランが増えてるのは、これはもう居眠り運転なんですよ。はっきりしてる。「睡魔に襲われた」ってはっきり言ってるんですよ。はっきり言ってる。

で、僕は運転士に直接、話を聞いて回りました。みんな「眠い」「疲れた」というのが合言葉なんですね。
「眠い」って言ったら、向こうが「疲れた」。こっち側が「疲れた」って言ったら、「眠い」と。もう合言葉になってるらしいんです。

でね、このオーバーランを簡単に考えちゃいけませんよ。2005年にJR福知山、乗員乗客107名の命を奪ったJR福知山線は直前にオーバーラン事故をやってましたからね。そうです、そうです。もうオーバーラン事故をやってたんです。

だから、オーバーラン事故っていうのは事故の大予兆なんです。さらにあのときよりももっと恐ろしいことが進んでるのは、JR東日本はですね、10年未満で担務を変えていこうというんですよ。だから、これまで駅員をやってた人が車掌をやったり。これまで、えーっと駅員をやってた人が車掌をやったり。専門性をなくすんですね。

そうなると、どういう恐ろしいことが起きるかというと、今までオーバーランしていてもですね、運転士が居眠りしててもですよ、車掌が非常レバーを引けば、止まるんですって。ところが、その非常レバーを引くのは10年以上のベテラン車掌じゃないと、ためらう。引いていいかどうかわかんなくて、ビビるんですって。だから、引けないんです。

だから、これから10年以上の選手の車掌が減るから、もっとオーバーランは増えるんです。もっと事故になる確率は増えるんです。

大貫 今のメディア状況も同じような感じですね。

田中 これはメディアで言うとですね、原発とJRが一緒なんですよ。広告大手ですから。書けないんですよ。
ある人、これは言っちゃ悪いけど。とにかく、いくら言っても書かないんですって。JRの不祥事は原発と一緒です。

大貫 すみません。「時間がない」と進行係に言われまして。これから本間さん、杉尾さん、山口さん、一言ずつお願いします。それでいったん5分間おいて、またちょっとやります。

本間 ここ最近、大学で話をしたりするとですね、学生たちが、どうして本間さんはこういう極端論というかね。まあ、彼らにはそう見えるらしいんですよ。告発とかそういうことをして。「命の危険とかないんですか?」って言うから。「そんなのないよ」と(笑)。そんなのないしね。「何か家に嫌がらせとか来ないんですか?」って言うから、「そんなの来ないよ。考えすぎだろう」って。

でも、彼らって何か本気でそう思ってるみたいなんですよ。それとね、ネットで。やっぱり若い世代はネットを使いこなしているって僕らは何となく思ってるんだけども、彼らはですね、「ツイッターとかで意見を発言なんかしません」って言うんですよ。「そういうことをすると、履歴が残って、就職のときにマイナス評価を受けるかもしれないから」って言う。これ、いくつもの大学で僕、聞いてるんですよね。

だから、もう完全にメディアの自主規制なんてレベルじゃなくてですね(笑)。個人がですね、しかも大学生ですよ。
で、僕、昨日聞いたのは大学生で1年生ですよ。1年生の女の子がツイッターとかで例えば何かをね、批判したりすると、それが残ってしまって。その就職を。3年後に就職しようとしたときに名前で全部紐付けで出てくるから。それを企業とかが見て不採用に、一つの要因になるんじゃないでしょうかって言うから。

「そんな企業に行かなきゃいいじゃねえか」って言ったら、「あ、そうですね」なんて言うんだけど。
そういうことを本気で考えてるんですね。だから、あのー、びっくりするんだけど。だからね、多分、若い人たちからのね、支持っていうのは確かにほとんどないんですよね。みんな匿名ですから。
だから、何かそういうね。今日はメディアの話っていうか。報道の自由度って話だったから、あれなんですけど。

もう大学1年ぐらいのレベルで。すでに個人の意思を自主規制し始めてるっていうので。ちょっとやっぱね。かなり怖い。ね。かなり怖い状況に入りつつあるなっていう。気がします。

大貫 杉尾さん、そういう今の指摘。有権者がそんなレベルだったら、どうしますか?

杉尾 あのー。それと多分、若い人の内閣支持率が高いっていうのは、ある程度、一定の相関関係があるなと。つまり、もともと日本の社会って同調圧力が高いじゃないですか。そこにさらに協調性とか。はみ出すことの怖さみたいなのがすごくあって。

例えば、僕はメディアの時代には、そのときには例えば、民主党政権のときには民主党の批判をしていたわけです。今度は安倍政権になったら、安倍政権の批判をしていて。権力をチェックするというのが一つの仕事だからとか思っていたんですけど。

多分、そういう批判するっていうこと自体が。批判イコール足を引っ張る、足を引っ張るイコール反社会的行為だと。こういうふうに多分思われているという感じがすごくあって。ですから、野党はすごくやりにくいです。「僕らは悪いことをしているんだろうか?」というふうに。こう思っちゃうんですね。

で、そういう政党というか、そういう政治の世界の空気とメディアの空気というのはやっぱり、同じように関連性があって。これをどうやって打破するのかというのは極めて難しく重いテーマだと思っています。

大貫 山口さん、前半の締めとして。

山口 いや、今の杉尾さんの話を聞いて。確かにそういう空気ありますよね。
で、だから、もうそれはネット上の用語ですけどね。「反日」っていう言葉、あるじゃないですか? 何かを批判すると。政府っていうか、政府のやっていることを批判すると、反日っていうレッテルを貼られるんですね。

でも、それは全くの嘘で。多分、要するに日本に住んでいる人はみんな日本が好きなわけじゃないですか。愛国ですよ。全員が愛国ですよ。
だけど、「違う道を通って行きましょう」っていう。その道の通り方が違うだけだったり。要するに「みんなを幸せにしよう」っていう幸せにする方法論が違ったり。利益代表の、自分たちのバックボーンが違ったり。っていうことで意見が異なるっていうだけなんだけれども。

まあ、簡単に「あいつらは反日だ」みたいなことを言って。杉尾さんがおっしゃったように、批判的なことを書くと、「足を引っ張ってる」。
「悪口を言っている」ということも最近よく言うじゃないですか。好きだから批判してるわけじゃないですか。

僕、『週刊朝日』のときに検察批判、「検察の捜査がおかしい」っていうのを随分キャンペーンで書いたんですね。で、寺澤(有)くんっていうジャーナリスト、警察が本当に嫌いで。「警察なんかなくなってしまえ」と。そういう人もまあ、一部いるんですけど。

僕らは何で検察を批判していたかというと。人が検察を信用しなくなったら、この国はどうなっちゃうんですか。法秩序はどうなっちゃうんですか。だから、検察はちゃんとしてほしいし。外からの批判に耐えるような手続きで運営してほしい。だから、批判しているんですよ、という。こういう面倒くさいロジックをみんな考えていくわけです。

ただ単に「こいつらは悪口を言っている人たちだ」っていうふうにね、なってしまっているので。確かにおっしゃる通りで。この課題を解決するのに、大変ですけど。でも、こつこつやっていくしかない。一個大事なのは、やっぱり諦めないということかなと思いますね。

やっぱり、こんなシンポジウムをやったりするっていうこととかですね。情報を常に発信し続けていく。「今、メディアの状況はおかしいよ。歪んでるよ」ということを、悪口を言われてもめげずに(笑)。まあ、言い続けて。一人でも多くの人に浸透させていくっていうことから。取り敢えずやっていくっていうことでしょうかね。

大貫 まだまだ議論は続くんですけど。取り敢えず前半はこれで終わりにしまして。5分後に再開してね。2時35分から。ありがとうございました。

大貫 それでは、シンポジウム後半戦に入りたいと思います。先ほどのあれなんですが。山口さん。

山口 はい。

大貫 また、最初から。今度は始めてください。

山口 はい。

大貫 気づいた点からね。報道の自由について。

山口 安倍さんの話を聞いて、一個思いついたことがあって。巨大プラットフォームの問題でいって。
僕らも会社を辞めるとき、そんないろいろな。ヤフーについてとか。まあ、何かいろいろ。今は実際あの、そこにコンテンツの提供とかを。編集プロダクションとしてコンテンツの提供とかをさせてもらってるんですけども。

やっぱね。お客さんなんであんまり悪口は言いたくないんですけど(笑)。やっぱり、プラットフォームの人たちって、メディアとかジャーナリズムっていう発想でやってないじゃないですか。基本的に。
ユーザーの人っていうか、読者の人たちは要するにその、メディアだと思って見ているかもしれないんだけど。

すごくね、話していてよくわかったのは、あの人たちにとってニュースって、記事って何かというと、撒き餌なんですよ。お客さんを集めるための。
さっきおっしゃった何億ビューを集めるための餌なんですよ。

だから、何が言いたいかというと、ニュースとかジャーナリズムということに対してもちろん、権力のチェックとか権力の監視ということには全く関心がないし。思い入れがない。
すごいわかりやすいのが最近『グノシー』とか『スマートニュース』ってあるじゃないですか。これ、アプリを落として見るとわかるんだけど、「クーポン」っていうコーナーがあるじゃない(笑)。クーポン。で、マクドナルドが50円引きになるとか。

安倍 そうなんですよ。クーポン配ってる。よく使ってるんですけどね。

山口 使いますよね(笑)。牛丼がね、40円引きになるとかね。クーポン。つまり、何というのかな。安倍さんとかはもともとメディアの人だから。こういうツールを使って、メディアをやりたいってやってる人なんです。
だけど、一見メディアに見える『スマートニュース』とか『グノシー』とか何とかっていうところは結局、記事ってクーポンと同じ扱いなんです。
さっき言ったみたいに何だっけ、「○○ぴょんが記者会見やりますから」みたいなのと同じです。

安倍 クーポンより下なんです。クーポンが先に来る。
だって、テレビでニュースやってるのに。『スマートニュース』の宣伝って、クーポンの宣伝してるじゃないですか。

山口 そうそうそう(笑)。
っていうような。愉快な時代と言ったらいいのか。恐ろしい時代と言ったらいいのか。わかんないですけど。
というふうなところに今、来ていて。本当に同じことを繰り返しますけど。ユーザーの皆さん、本当にそれでいいんですかって。ちょっと考え直してっていうふうに。ちょっとメディアの側としては言いたいなと。

安倍 ちょっと一点、新しい視点で。
僕、ちょっと杉尾さんに言いたいんですけども。野党側も、もちろん与党側もそうなんですけど、政治の情報発信。
まあ、インターネット選挙が解禁されて実はまだ日が浅い。5年も経ってないぐらいじゃないですか。

われわれが政治家の取材をするときに政党のホームページに行ったり、個人のホームページに行ったりなんかするんですけども。
政治がまだインターネットを使いこなせていない部分ってありますよね。で、ツイッターで発信したり、フェイスブックで発信したりというのも、ごく一部の議員だったりするし。

あとはその、われわれも知りたいわけですよね。有権者として。その政党がどういうことで、どういう活動をしていて、どうなのかっていうのがわかんないし。さっき、アーカイブ化っていうのがあったんですけど、過去どういう発言をしているのかとか。全然データベースもなくてですね。すごい苦労するんですよ。取材するときに。

だから、「やっぱり、なかなか野党のこと、わかってもらえないよね」っていうこともあるんだけども。もちろん、われわれも追ってたりするんだけども。政党側ももっとバンバンですね。これだけのツールがあるんだから。各個人がメディア化することもあるし、自分たちで立ち上げてもいいんだけど。もっと情報発信をしてもいいんじゃないかなって感じてます。

大貫 杉尾さんにちょっとあれが出たんで。政治がですね、米国ではようやくね、大統領選挙に対してロシアがフェイスブックなどを通じて介入したってことから、フェイスブックの編集責任が問われたんですね。

初めて、その、単に流せばいいってものじゃないと。そのプラットフォームのね、その姿勢そのものが問われると。これは初めてのことなんです。これまではその危険性に気がついていなかった。その点、ロシアが危険性を教えたってことになるんですが。

大貫 まあ、情報がね。商売ですから、彼らは。どんどんどんどん情報を集めて。

大貫 それがまた非常に問題になってきまして。ですから、欧州ではフェイスブック、GAFAを規制するとか。グーグルとか、アップルとか。そういうのも出てきているんですが。
と同時に、今度、杉尾さんがNHKの重役人事についてあれするということで。

NHKはですね、国会が大手を振って立て直すことができる機関ですね。まあ、もちろん、電波を免許で使っている各テレビもそうですけども。必ずできるんです。それをもう少しきちんとやるいいチャンスだと思うんです。
だから、1日で終わらせないくらいにね。各党が協力して。

NHKは実は他の場でですね、裁判官を辞められた瀬木(比呂志)さんがですね、やっぱり、NHKさえ変われば何とか変わるって言うんですね。メディア、特に大きなメディアをいかに変えていくかが大事だと思うんです。
ですから、杉尾さん、今度国会でいろいろされるということで。

杉尾 はい。その前の安倍さんのお話、私も全く同感で。同じ、その立憲民主党ってまだ1年半ちょっとの政党なので。「機関紙報道局長」というのを拝命しておりまして。私一人しかいないんです。職員もいないという。
「ライン何とかしなきゃね」っていうんで。ラインの人に来てもらって、話をしたんですけど。

結構、自民党はライン先行してるんですよ。ラインのフォロワーを増やしたのが、安倍さんのスタンプを無料で配ったと。金を出せば無料で配れる。何百万円とか、そんな単位。まあ、何千万円まで行かないかな。
人もいなければ、金もいないというところでやるのは確かに大変なんですけど。これはやらなきゃいけないんで。

今、それと、あとはあんまりよろしくないんだけども。自民党が例えばやってることで、書き込みですよね。金でアルバイト的にその、悪意の書き込み。あれまでやられてるんで。こちらとして、どう対策を立てればいいのかっていうのが。非常に難しくて。これ、正直言って困ってます。

大貫 やはり国会の場でそれもお金で支配していきますと、とんでもない結果になりますし。米国もそうなりつつありますけども。
ですから、国会がもう少し。あとは各メディアですよね。「なぜ、これを取り上げないのか?」という質問を出していくとか。そういうこともやるしかないのかなというくらいまで、事態は進んでいるかなと思うんですけど。
本間さん、どうですか。博報堂の宣伝をする側から、いろいろ今、NHKも含めて、電通にかなり大手マスコミがやられてるって言いますけど。

本間 そうですね。まあ、今、杉尾さんの立憲もラインをやるかとか。それはやっぱり本当に可及的速やかにおやりになったほうが多分いいと。思いますね。

やっぱり、僕、国民投票の件であちこちで講演させていただいていて。やっぱり、常々言うんですけど。野党っていわゆる広報宣伝のプロというか、部署っていうのがまあ、ないっていうのか。あるのかもしれないですけど、決定的に足りてないっていうのがあって。

そういって、じゃあ、例えば、もちろん、お金がないからできないとか。そういう理由はあるんですけども。継続的に1年とか2年追い掛けて、その問題をどう解決するかとか考えるとか。まあ、やっぱり、いろんなプロを呼んできて、どうするっていう相談をするとかですね。

やっぱり、どうしても付け焼き刃で「思い立ったら吉日」でやろうとしても、なかなかできないので。今、野党がなかなかみんなバラバラで、そういうことが難しいということは非常によくわかるんですけど。

僕から見ると、どんなにバラバラになっていても、どんな小さい単位だとしても、やっぱり広報宣伝を考える係っていうのは絶対に必要だと思うんで。そういうところの整備っていうのはずっとしていってほしいなっていう気はするんですよね。

大貫 今、非常に政権のメディアコントロールが効いていて。もう、とにかく不都合なことは報道されないというところがあります。野党が確かに杉尾さんがおっしゃった通り、「空気を斬る」ようなものでほとんど手応えがないと。

非常に危ない状況だと思うんです。それを変えるにはやはり野党共闘しかないと思うんですけど。結局、選挙で勝たない限りは権力は取れない。権力がない限り、何もできないという悪循環が続いてるんですね。

これはマスコミが野党に公平な報道をするとはほとんど思えませんで。ましてや、そういう何ができるかということになると、結局、選挙に勝つしかないんですね。そうすると、やっぱり野党の共闘しかないんですね。

杉尾 その通りです。

大貫 じゃあ、誰ができるかとかね。本当に難しい。この大きな問題を考えたら。メディアを健全に戻すためにも、権力を一度ひっくり返すことが必要だと思うんですけど。田中さん、どうですか。秘策はありますか。

田中 いや、秘策というか。既存の新聞とかテレビの信用が下がっていって。とにかく若い人も。老若男女を問わず、ネットで見ますよね。スマホでニュース。
で、じゃあ、ネット対策は自民と野党、どっちが長けているかというと、自民のほうが100倍くらい長けてますよね。

これ、面白いんですよ。自民党が政権転落する前、自民のほうがインターネットの、選挙でインターネットの使用に強硬に反対してたのは自民党の古老たちだったんです。

ところが、ところがですよ。あのころ、僕、自民党の話に行った。日本インターネット新聞社にいたから、自民党にも話行けてたんだけども。実はですね、ネットのユーザーは自民党支持のほうが多いんですよ。ネトウヨに代表されるように。

彼ら、それに気づいたんですよ。気づいて、どんどんどんどん進め始めたんですね。安倍さん自身がニコ生に出演して。まだ野党だったですからね。安倍総裁が行って、しょっちゅうニコ生のスタジオへ行って。出演してしゃべりまくって。もう、今に至っているわけです。

まあ、いろいろ諸々書き込みがありますよね。ネットでの影響力っていうか。雰囲気の作り方っていうのは100倍くらい野党、長けてますよね。野党より自民党のほうが。

だから、ここをひっくり返さないと、変わらないんじゃないか。変わらないって、ここをひっくり返すと、だいぶ違ってくるんじゃないかなと思いますよ。

大貫 確かに重症ですよね。藤田さん、ここにいらっしゃった藤田さんがね。カンボジアの選挙でもフン・センが圧倒的なあれをこう、野党にもでっち上げを流したんですね。
日本に住むカンボジアの人が抗議に行くんですよ。藤田さんがいろいろやっても、全然動じない。つまり、もう巨大なプロバイダーも大変な力を持ってるんですね。これを変えないと駄目だという気もする。そうすると、やはり、法律で変えていくしかないんですね。

結局、野党は政権を交代させるしかないですよ。それでやり直さないとですね。とんでもないところに行くと思ってるんですけど。
杉尾さん、あらためてどうですか。

杉尾 全然できていないので、何も反論できないことが悲しいんですけど。
どうすりゃいいのかな、という。で、これは空気みたいなものがあるんでですね。あんまりえげつないことを僕らが、ネガティブキャンペーンをやるつもりはないんですよね。で、それが上品だから、駄目なのかもしれませんけれども。
まあ、だけど、諦めずにこつこつやってるとですね、いつか空気は変わるだろうという感じはなくもないんですよ。

その一つのきっかけは立憲民主党ができたときに、あのとき、ネットでわーっとなったんですよ。ツイッターでね。「枝野立て」ってのがまさにネットの世界だったので。まあ、それがちょっとうまく風をずっと持続できていないというところが残念なんですけど。何かきっかけがあれば、わーっと盛り上がるような、そういう環境にはあると思います。

それがいつどこで、また、どういうタイミングで来るかというのをよく考えないといけないんだとは思うんですけどね。
難しいですね、本当に。このテーマは本当に難しい。

この間、ちょっと話変わるんですけど、金子勝さん。今、立教大学の名誉教授かなんかしてる。金子勝さんの話を聞いていて。僕もふと思ったんですけど。

これまで政権交代、まあ、2回あったんですけど。実は経済が悪くなったときに政権交代をしてるんですよね。93年の細川連立政権もそうなんですけど。典型的なのは2009年の。あれはリーマンショックのあとなんですよね。

だから、社会の空気が変わると、ガラッと政治の世界も変わるんですよね。恐らく今度はそういうことがあると、ネットの世界がすごく盛り上がると思います。

今の若い人たちが政権を支持であったり、さっき山口さんがおっしゃったように、ネットに対する広報、例えば、野党がぼろくそに書かれている状況がですね、ひょっとしたらですね、例えば、今は職業がありますけど、職業がないっていう段階だったら、わっと変わりますよ。

という、そこをうまくわれわれがつかめるかというのを、ちょっと今からしっかり力を溜めてないといけない。
実はシールズのメンバーって何をやっているか、皆さん、あんまりご存じじゃないと思うんですけど。実はわれわれのネット対策をやっているのは、そういう人たちも入っているんですよね。

ちょっと、これ以上言うと、企業秘密に触れちゃうんで。メンバーは言えないんですけれども。
そういう今、環境整備だけはしようとは思ってます。

大貫 安倍さん、これからどういうふうになっていきますか。

安倍 今の杉尾さんの話を聞いて、頼もしく思いましたけど。繰り返しになりますけど、基本的には一人一人の政治家の力量が問われるわけで。
まあ、数多くの優秀な議員もいるわけでね。私は個人的には野党も含めて発掘してインタビューしに行ってですね、それを記事にしてっていうようなことをやってますし。本来は大手メディアもそれをやるべきなんですよ。でも、やらないんで。しょうがないから、まあ、こつこつやってるということがありますけども。

やはり、政党側が。おっしゃったアベノミクスが今、限界が見えてきている中で、じゃあ、立憲はどういう考え方を持っているんだろうなと。
これは国民(民主党)もそうなんですよ。この間、玉木(雄一郎)さんにも取材しましたけど。

個別的にはいいことを考えてるわけで。「それをもっと出したら?」って言ったら、「いやあ、まだ考えたばっかりなんで」なんて言い方をしてましたけど。
やっぱり、国民はこういう経済政策、立憲はこういう経済政策ということがわかんないでしょ、皆さん。パッと思い浮かばないじゃないですか。

それを、「あ、立憲だったら、政権交代したら、こういうことをやってくれるんだな」というのがわかるような。本当にわかりやすい政策を前面に出すべきだし。
それはね、各議員が個別にいろんなところで、全国で言って歩くというふうにこつこつやれば。

大貫 いいですけどね。

安倍 行くと思いますよ、うまく。質問があるみたい?

大貫 じゃあ、ちょっと時間が迫ってきたので、質問に行きましょうか。

THE PRESS JAPAN 櫻井真弓 どなたでも結構なんですけど、ユーチューバーについてどういうふうにお考えでしょうか。ユーチューバーって倫理も何もないわけなんだけど、それがもう職業として成り立ってしまっているわけですよね。寄附も。私がやっているツイキャスというのも寄附が取れるわけですね。もう、しっかりと生活はできないかもしれないんだけど。

それでまあ、お小遣い程度は稼げてしまうという。経験がなくとも、できてしまうというメディアというものが今、存在してるんですよね。
それについてどのようにお考えでしょうか。

大貫 どうですか。どなたか。

安倍 ええっとですね。ユーチューバーというのか、ユーチューブの番組でものすごい会員がいる番組があるんですよ。それを見るとですね、それはテレビに人を派遣する会社が運営してるんですね。
杉田水脈さんと築地の魚河岸の生田(與克)さんとかがやってるわけ。基本的にはネトウヨをターゲットにしてるんですけど。会員登録数が確か何万だったかな。何万人。で、視聴回数はうん十万なんですよ。

なので、とてつもないですね、広告収入が入るわけ。で、「安倍さん、どうですか?」って言われたんですよ。「同じようにやったらいいんじゃないですか?」って。
見るとよくできていて。もう真っ赤なスーパー入れて。それでこう炎を燃やしたりとか。

テレビの手法で全部編集し直してやってるわけ。でも、それはジャーナリズムでも何でもないので。
「毎月100万円儲かるよ」って言われると、心は動くけれども。やらないですよね、それね。それは全然ジャーナリズムでも何でもないので。

エンタメですよ。エンタメ。究極のね。言いたいことを言っとると。放談ね。
そういうのは、まあ、どうなのかな。まあ、確かにお金も儲かるし。一定の視聴者はいるんだけども。

それは政党もできないし。われわれジャーナリストもそれはできないなと思ってます。うらやましいけどね。

山口 『カズヤ(チャンネル)』とかもそうでしょ。やっぱり、ネトウヨっぽい発言のほうがお客さんは集まるわけですよ。集まるっていう事実があるわけですよ。そうすると、それを仕事というか、ビジネスとしてやろうと思ったら、自分はそうじゃないんだけど、敢えてそっちのほうに振った言説を流して。ビューを稼いで、お金にしている人たちもいるし。

その甚だしいのはフェイクニュースですよ。嘘だけど、こんなんだったら面白いだろうなっていうことをニュースにして。流して。ビューを稼いでお金にしている人たちがいるっていうので。
この存在は困ったもんだとしか言いようがなくて。どうしようかな、ですよね。

安倍 制限できないですからね。

山口 うん、そう。制限できない。

安倍 そのフェイクニュースをチェックするイニシアティブが立ち上がっていて。(弁護士の)楊井(人文)さんっていう日本報道検証機構の人がやって。僕とか山口さんはもちろん、協力はするんだけど。やっぱり、まだまだ力が弱いというか。フェイクチェック(ファクトチェック )の動きって、多分、欧米のほうはもっとすごいパワフルなんですよね。動きになって。先ほど、フェイスブックの話も出ましたけど。

そういう巨大なプラットフォーマーも、嘘は流しちゃいけないよと。フェイスブック自身も、例えば、反ワクチン運動については、そういう言説は消していきますなんてことを言ってるわけだけども。
それは巨大プラットフォーマーが、逆に言うと、編集機能を持つっていうことなんですよ。それはそれでまた危険なことで。

山口 いや、そうだよね。

安倍 (フェイスブックCEOのマーク・)ザッカーバーグがですね、「うん、これはちょっといかがなもんか」とか言いながらですね。奴の意思でニュースが消えちゃうわけですよね。
10億人も見てるわけでしょ。その中から一部の情報が消えると。これはまた恐ろしい話であってですね。

非常に怖いところにグローバリズムが進んでいるなと。情報というものを巻き込んでね。
日本のネトウヨのユーチューバーなんてかわいいもんですよ。そんなもん。見てたって、何万人の話ですから。こっちは10億ですからね。

ケン・ジョセフ えっと、2つ質問があるんですけど。皆さんに。
自由報道協会は僕はとても大事だと思うんですけど。メンバーがいないんですよ、全然。
それを昨日、たまたま大貫さんと一緒に英語の雑誌で取材したんですけど。皆さん、びっくりしてたんですね。私は「どうしてかな」という。

何とか増えさせる方法はないかという。
すごく僕は海外、前に自由報道協会のカードでね、ホワイトハウスまで入りましたよ。

特に取材しているときに、この身分証明証だけでも、とても大事なんですね。だから、フリーのジャーナリストたちは本当はもう何千人も入っても、全然おかしくないのに、どうして入らないというところが。
ちょっと今日ね、せっかくみんな集まってるので。一緒に考えて、いい案があればですね。使い方がわからないのか。

海外で取材するときには、身分証明とあと、お手紙あればですね、ほとんどどこでも入れるんですよ。だから、年間1万円でね(笑)、フリーの人が「普通のジャーナリストとして認める」というのが本当はだーっと増えてるはずなのに。何とかこれを1年の一つの目標として。あればいいというのが。数人しかいないというのは。

大貫 これはね、日本国内はね、それは通用しないんです。私も欧州で自由報道協会の記者証は通用します。
実は2人ほど、ニューヨーク在住の女性の人が会員になりました。これは米国で通用するからです。

つまり、日本は非常に閉鎖的。今の政権は締め出そうとしてますから。そこの問題があります。だから、政治で変えていくしかないんです。

ケン・ジョセフ もしかして、知らないかもしれない。知ってて、まだ入ってないのか。もしかしたら、申し訳ないけど、誰も知らないのかもしれない。
もう一つの質問はとても恐ろしいのは、日本のニュースが世界に全く発信されていないんです。ゼロです。CNN、BBCとほとんど止まってます。

今までだったら、英語ができないからしょうがない。今はAIがありますからね。
ですから、一つの見方としては、国内はもう変な言い方ですけど、諦めて。とにかく何もかもAIを使って世界に飛ばして。それが戻ってくる。逆にネットのいいところもあるんですよ。

ですから、集まって、いつも「日本のメディアは」と話していても、当分変わりそうもないので。でも、素晴らしい、今、AIありますよ。この前ね、AIによる全く完璧なライブの翻訳ができるようになったんですよ。
だから、変な話、視点を変えて。とにかく何もかも世界に飛ばして。それで日本を変えていくという。とても素晴らしい時代なんですね。

この2点に対して、ちょっとアドバイスがあれば。この1年間ね、会員を増やして。気をつけないと、数十人だと誰も相手にしてくれないという恐ろしいところにぶつかってきていると思います。

僕はフリーのジャーナリストは本当に知っていればね、入る人がたくさんいるはずなんですよ。たった1万円で。もらえるということになるとですね。
とにかく世界中どこでも使えるし。日本だって、ちゃんと渡せるわけですよね。

大貫 山口さん、どうですか(笑)。

山口 その問題は代表の大貫から(笑)。
まあ、鋭意。鋭意きちんと。もちろん、それはこれまでも理事とか、今度、運営委員ってできたんですけど。その間では常に議論されていることで。

まあ、そういう意味でいうと、小さいことですけど、ようやくホームページとかも変えてきたし。それから、会員になると、こういう特典があるよということのアピールみたいなこともだいぶ整理されてきたので。

今、おっしゃったようなことがまだちょっとアピールできてないので。知らないから、入っても意味がないと思ってるんだと思うんですね。そこをうまく情報をつなげるという形で拡散していくということと。

今いる僕たちが積極的に勧誘活動みたいなことを続けていくということで。
多分ね、本当にフリーランスで仕事をしている人にとってはプラスだと思います。記者証ができたりとか。近く健保も入れたりとか。
いろんなフリーランスで活躍する人のための、特典とか、取材がしやすくなるような、そういうレターヘッドを出したりとかいうようなこともやっていきたいと思っているので。
まあ、それを確かにおっしゃるように情報拡散していくということがちょっと今まで足りなかったので。やっていきますので、皆さんも協力よろしくお願いします。

大貫 ホームページをね、ボタン一つで英語版もできるようにしたらどうだと。

山口 ああ、AIを使ってね。みんなで検討しようね。AIで本当にボタン1個でなるんならね。コスト掛かんないんなら。

大貫 まあ、そんな感じで。ちょうど時間となりました。
ありがとうございました。ほとんど結論は出ないですけど。ありがとうございました。

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