自由報道協会は2011年1月、フリーのジャーナリストたちが日本に誰もが各々の責任において自由に発言・報道していける開かれた言論空間を切り開くべく立ち上げ、その後起きた東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故と放射能災害の取材報道の中で、自由報道協会会員のジャーナリストたちの真実を報道する地道な姿勢が、福島をはじめ多くの人たちの共感と支持を得たのは日本の報道史上、また人権尊重と民主主義の観点からも画期的なことです。
しかし日本の報道の自由、真実に迫る報道の自由が確立された訳ではありません。
毎年、世界報道の自由の日(5月3日)に国際NGO「国境なき記者団」が発表する今年の「世界報道の自由度」で日本は先進(民主主義)国では最低に近い53位と評価されました。
日本に報道の自由度が何故向上しないのか? 国境なき記者団は、その要因として、(1)政府(公的機関を含む)諸機関の透明性の欠如、(2)東京電力福島第一原子力発電所の事故と、放射能災害に関する情報公開を尊重する態度がほとんどゼロに等しいこと、(3)原子力産業に関する報道で検閲が行われていること、(4)(閉鎖的な)記者クラブ制度が依然として改革されていないことを挙げています。
このことは、既存の大手メディアに属するジャーナリストたちの多くが、最近 十分意識するようになっており、何とか改革したいと努力していると聞いております。
大きいメディアは大きいなりに、小さいメディアは小さいなりに、その特性を生かして互いに切磋琢磨していくことが理想の形です。
「自由報道」は本来、人権と民主主義が保障される社会では当然のことであるべきで、真に人権が尊重され民主主義が保障される社会では、わざわざ「自由報道協会」の旗を掲げる活動は本来必要ないものです。
しかし、日本社会の言論・報道の現状はまだまだ理想には程遠く、「自由報道協会」を取り巻く環境も厳しいものがあります。これからも成功する時もあれば失敗することもあり、逆風にも晒され、人々の誤解を受ける場合も多々あるでしょう。
一方で、そういう混乱した状況であればこそ、人々に出来るだけ多角的で多様な情報・言論を提供して、物事を考える一助に寄与することが大事になっており、「自由報道協会」の活動が一層必要なことを示しています。
まして、政府・公的機関の透明性の徹底と、放射能災害に関する情報の公開は、世代を超え推進していくべき重要な課題です。
「自由報道協会」の方針と活動に、何人かでも理解し、支持・支援を頂ける人たちがいる限りは、掲げた旗を掲げていく必要があると考えております。
皆さん、いかなる状況に置かれても、僅か2年余りでも歩んだ足跡は消えません。
すでに冷戦体制の崩壊から23年が過ぎ、情報技術の発達・革新と相まって、世界の潮流はまさに我々が目指す方向と一致しています。
これからも、各々の出来る範囲で、各々の責任において自由闊達に意見を交換し、また、理解とご支援を頂く人々の声に耳を傾けて、共に我々社会の言論空間を世界に伍するものにして行こうではありませんか。
2013年5月18日
公益社団法人自由報道協会
代表理事 大貫康雄