産経新聞前ソウル支局長の書いた韓国の朴槿惠大統領に関するコラムをめぐる問題で、ソウル中央地検が前支局長を情報通信網法違反の名誉毀損罪で在宅起訴しました。
私たち公益社団法人自由報道協会は、この事態に深い憂慮の念を表明するとともに、韓国政府に対する強い抗議と、速やかな処分撤回を求めます。
もとより、報道•出版•言論の自由は全体主義•独裁体制の対極にある民主主義国家の根幹をなす価値観です。私たち自由報道協会は、こうした価値観に基づき、取材•報道に携わるすべてのジャーナリストに対して公平な取材機会を提供するための活動を続けています。
今回の韓国政府•検察の対応は、先進民主主義国家が当然遵守すべき言論の自由に対する明白な侵害で、韓国民主化以前の軍事独裁政権下に戻ってしまった印象です。韓国は日本にとって自由と民主主義の価値観を共有する大切な隣国です。それだけに、今回の事態には悲しみすら感じます。
前ソウル支局長の書いたコラムは、朴大統領が旅客船沈没事故当日に連絡のとれない“空白の時間”があり、それについて韓国国内では「男性と密会していたのではないか」という噂があるということを、韓国の有力紙「朝鮮日報」の記事や韓国の証券筋の話を引用しながら、日本の読者に対して日本語で紹介したものでした。
「噂」には「真偽不明」との明記もあります。
しかし、ソウル中央地検の起訴状は、コラムが朴大統領の密会の事実を断定しているとの前提で書かれているかのようにも読め、誤読や十分な検討が行われなかった可能性も疑われます。
www.sankei.com/world/news/141009/wor1410090010-n1.html
公人中の公人である大統領の動静に関する情報は、噂を含めて重要な公共関心事であり、それを伝えることは公益にかなうものです。ソウル支局長の書いたコラムは、日本をはじめとする先進国の基準に照らせば名誉毀損には当たりません。
私たちは、韓国政府•検察が一刻も早くこの逸脱から脱却し、報道の自由の保障を取り戻すべきだと考えます。
2014年10月9日
公益社団法人 自由報道協会