第10回、第11回日本ジャーナリスト協会賞概要
第10回、第11回日本ジャーナリスト協会賞大賞作品が決定いたしました。
同賞は2012年1月27日に弊会の設立1周年を機に、すべてのジャーナリストを対象にしたジャーナリズム賞として創設したものです。
今回は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、延期になっていた第10回とあわせての開催になります。
一般投票と外部選考委員を交えた最終審査を経て、以下の作品を大賞作品として決定させていただきました。
投票にご協力いただきました皆様には心より御礼申し上げます。
■対象作品■
【第10回】2020年1月1日から2020年12月31日までの期間に取材、報道、評論活動などを行い、ジャーナリズムの信用と権威を高めた作品。
【第11回】2021年1月1日から2021年12月31日までの期間に取材、報道、評論活動などを行い、ジャーナリズムの信用と権威を高めた作品。
第10回日本ジャーナリスト協会賞
上西充子「国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み」(集英社クリエイティブ)
第11回日本ジャーナリスト協会賞
角南圭祐「ヘイトスピーチと対抗報道」(集英社新書)
外部選考委員・元木昌彦氏による講評
■第10回日本ジャーナリスト協会賞■
上西充子「国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み」(集英社クリエイティブ)
参議院選はおそらく自民党と日本維新の会が議席を増やして、秋から来年にかけて憲法改正へと動き出すのであろう。だが、多くの国民は、安倍晋三元首相を含めた保守派が、なぜ、今、憲法、特に9条を変えなくてはならないのか、彼らが国会できちんと説明したのを聞いたことがあるだろうか。いつもながらの要点を外す「ご飯論法」のまま、この大問題もすり抜けようとしているに違いない。
改憲のような重大な問題ではなくても、上西さんがいうように、メディアでは法案が採決に至る前の国会審議そのものが詳しく報じられるべきだが、残念ながら今のメディアは役割を放棄してしまっている。メディアがやらないのなら、自分たちで「今日の国会ダイジェスト」をつくってしまえと、国会パブリックビューイングの街頭上映を始める過程は痛快である。
既存の大メディアは、自分たちが自民党を下支えしているにもかかわらず、有権者は政治への関心が低い、だから日本の政治は変わらないなどと的外れなことをいい続けている。上西さんの試みは、大メディアへの痛烈な批判であり、草の根民主主義が目指すべき一つの方法を提示している。大賞に値すると考える。
次点にした春名幹男氏の『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』は大変な労作である。だが私には、これまでいくつも出されてきたロッキード事件の内幕ものをはるかに超えるとは思えなかった。
また、『精神0』(想田智弘)は見ることを強いるドキュメンタリーだ。マイケル・ムーアのドキュメンタリーの対極にある「観察映画」だが、見ている間、観客は様々な思いが浮かび、画面から目が離せなくなる。こうした手法が何を生み出すのか、これからが楽しみだ。
■第11回日本ジャーナリスト協会賞■
角南圭祐「ヘイトスピーチと対抗報道」(集英社新書)
こちらは一般投票多数により、大賞作品として決定させていただきました。
開催概要
主催:公益社団法人 日本ジャーナリスト協会
運営:公益社団法人 日本ジャーナリスト協会
趣旨:公益社団法人 日本ジャーナリスト協会 定款に基づき取材、報道あるいは評論活動などを通じて、ジャーナリストとして顕著な業績をあげ、ジャーナリズムの信用と権威を高めた作品を顕彰するものです。
選考:日本ジャーナリスト協会役員、運営委員を中心とする選考委員会
表彰:大賞授賞式の開催を予定しております。
2022年7月13日
公益社団法人日本ジャーナリスト協会 アワード選考委員会