ご挨拶
公益社団法人日本ジャーナリスト協会は、公益社団法人日本記者クラブ並びに公益社団法人日本外国特派員協会(外国人記者クラブ)と合わせて、我が国に3つしか存在しないジャーナリストのための公益法人です。
日本新聞協会、日本民間放送連盟、日本放送協会により設立された日本記者クラブが大手メディアを会員の対象としているのに対して、日本ジャーナリスト協会は、フリーランスの記者や雑誌、ウェブメディアの記者の方々にも門戸を解放しています。もちろん大手メディアや外国メディアに属するジャーナリストの方々も、個人としての参加を歓迎しています。また、当協会は、会員の会費並びに個人の寄付により、完全独立採算で運営されています。いわゆる各官庁の記者クラブのような、政府による支援も受けておりません。
日本ジャーナリスト協会が目指すのは、本来のジャーナリストのための組織であり、また、そういったジャーナリストの支援、育成、啓蒙、さらには、ジャーナリストが所属する報道機関の啓蒙までも視野に入れています。一方、ジャーナリスト同士の社交の場の提供や会員相互間の友好親睦などは目的としておりません。
当協会は、政治や信条に完全に中立な法人であり、国民の知る権利に応えるべく、一切の予断、偏見や特定の信条、利益に依らずに報道する、本来のジャーナリストの活動支援を目的としています。当協会は記者会見の場を広く提供しており、会員以外の記者会見も公益性があると判断されれば、記者会見の場を提供もしくは主催しますが、当然のことながら、記者会見者の主張を協会が支持するものではありません。
これは会員のジャーナリストの方々のみならず、協会自身が完全に政治や信条、経済的な方策などからの独立を維持することが重要であると考えているからです。ですから、当協会が開催をホストした場合においても、あくまで会見者の使命としての開催をお願いしており、協会がその内容を推進するものではありません。これは外国人記者クラブと同様です。
ジャーナリズムが正当に機能するには、ジャーナリストが、株主などの資本、広告主などの利害関係者、政府や業界団体などの権力、さらには取材対象からの圧力等より独立していることが最低限必要です。具体的には各報道機関における編集権の独立、視聴率などの経済論理の排除、「大物」たちの圧力からの隔離がジャーナリストに提供されない限りは、ジャーナリズムは成り立ちません。
我が国は、ジャーナリストの多くが大手メディア企業に属するサラリーマンであり、終身雇用制もあり、編集権の独立どころか、特定の政治や信条、経済論理を社是として肯定している経営者が編集権に介入することが当たり前になっている、世界的にも後進的な状況にあります。また、首相補佐官らのジャーナリズムに介入する能力が官邸で高く評価されているのは事実であり、これは世界の大統領府でも同様なことですが、他の先進国では、こういった権力のメディア戦略にも対抗するジャーナリズムが確立しており、御用ジャーナリストにメディアが独占されている日本は「非常事態」が続いています。
2020年4月22日発表の国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF、本部パリ)の世界各国の報道自由度ランキングでは、日本は66位という民主主義国とは思えないランキングでした。これは韓国よりも24位低く、先進国とは全く言えない状況です。
日本では、新聞発行部数が、ニューヨークタイムズ48万部に対して、読売800万部、朝日550万部、毎日250万部等と新聞メディアは完全に寡占され、テレビに至っても民放4大系列とNHKの寡占により「大本営」発表をそのまま流すのが、サラリーマンジャーナリストの日常となって久しいものがあります。「大本営」の実態や背景が何かは考察しませんが、少なくとも納税者や国民ではありません。もちろん、このままでは、どんな人物が日本のトップになっても、この歪んだ構造を利用することはあれ、変える動機は生まれてこないでしょう。
最近では、記者クラブ幹事社2社の記者と元記者が、検事長と「賭けマージャン」をしたことで、検事長の辞任にまで至ったことはニュースを賑わせましたが、大手メディアは検事長を批判しても、司法担当記者が金銭を取材対象とやり取りしていた、あってはならない事実については一切批判をしていません。
当協会は、ジャーナリストの本分は、あらゆる権力の監視であり、また、差別や不正などで国民の権利を侵害するあらゆるものから、主権者である国民の「知る権利」のみを行使し、日本国籍の有無さえも問わず、市民を守ることであると考えます。このジャーナリストの本分を全うするために、ジャーナリストが行使するのは、憲法21条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」で規定された憲法上の権利のみです。
ジャーナリズムは、主権者である国民の人権を守るためにあるのであり、もちろん、そのために憲法で保証された権利を行使することを権力とは言いません。ですから、私自身はジャーナリズムが“第4の権力”とよく言われるのは、日本国憲法上は誤りと考えています。権力を持つあらゆるものから、憲法で保証された国民の権利を守る。また、そのための道具も憲法21条で規定された権利のみであり、従ってジャーナリズムは本来権力を持ちようがありません。
もちろん、メディアはその気になれば権力に付くことも、自身が権力になることもできます。そういった誤ったジャーナリズムを日本から無くしていくのも、当協会のまさに公益法人としての役割と考えます。ジャーナリズムは決して権力になってはいけない。常に弱者の味方であるべきと、当たり前のことを当たり前に考えるジャーナリストの集まりであり、また、知識の習得も含めて、そのような「当たり前の本物のジャーナリスト」を育てる役割も担っていると考えます。これはよく言う、右か左かではありません。いわゆる右も権力、左も権力です。ジャーナリストは、政治信条、経済論理から完全に独立すべきです。ジャーナリストは真実を追求するのですから、自身にバイアスがあれば、いわゆる「スコトーマ」の原理で真実は見えません。
そうは思わない有名「ジャーナリスト」に米国などでも実際に会うことがありますが、彼らは、ロビイストであり、メディアマンではありますが、ジャーナリストではありません。当協会は、そう考える職業ジャーナリストのための協会であり、それに賛同するジャーナリストや、同様の考えを持つジャーナリストを目指す方々や応援する方々に門戸を解放しています。
また、公益社団法人として、当協会の事業に賛同される方々からの寄付も募っています。詳しくは事務局にお問い合わせいただき、共に、日本に少しでも早く、「当たり前の本物のジャーナリズム」を根付かせて行きたいと思っています。
公益社団法人日本ジャーナリスト協会
代表理事
苫米地英人